研究課題
軟岩の化学的風化による劣化を実験室で再現し、強度や剛性の低下を測定することを行った。自然軟岩の実験では個体差によるデータばらつきが大きいため、砂と水、石灰、石こうを混合して固めた人工軟岩の実験も重視した。準備した試験体を酸性水(ph=5および4)の水に浸潤させ、結合を溶解させて劣化を惹起した。これらのサンプルで一軸圧縮試験を実施し、ピーク強度及びその後の軟化プロセスを計測した。また自然の岩石強度をより迅速に測定する為の点載荷実験も実施。前年度まで行っていた風化再現研究が剛性と強度の変化に着目していたことに対し、広島の花崗岩風化斜面の崩壊と長距離流動を考慮して、今年度はピーク強度後の応力低下に着目した。破壊に至った斜面では外力はピーク挙動に達したと考えられ、その後は変形が進むにつれて抵抗応力レベル(残留強度と呼ぶ)は低下する。すると運動方程式の考え方により、『すべり土塊の質量×加速度=外力-抵抗=ピーク強度-残留強度』なので、残留強度の劣化が著しければ、加速度すなわち流動性が高まると考えられる。しかし人工軟岩の一軸圧縮実験結果によれば、化学的風化によってピーク強度は著しく劣化して斜面は不安定の度合いを高めるものの、残留強度には大きな差が生じなかった。この事は残留強度が化学的風化しにくいと解するべきではない。残留強度の段階ではすでに試験体は大きな変形を経験しており、すべり面に沿って粒子の結合は破壊され終わっている、したがって化学的風化は残留強度に影響しない、と解するべきである。他方、ピーク強度が発生する時点での変形(ひずみ)は化学的風化によって小さくなっており、崩壊の前兆的な微変形は、化学的風化によって露呈されにくくなる、すなわち崩壊の予見が難しくなる。自然の岩石について多数の点載荷実験行ったが、岩石ごとの個体差が著しく、強度低下以外に有意な傾向を見出すことは難しかった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Geotechnical Testing Journal
巻: Volume 39 ページ: Issue 3