海岸侵食が進む宮崎海岸の北部に位置する一ツ瀬川河口域において,土砂動態を解明した.過去の地形図及び航空写真による汀線の抽出を行い,近年の深浅測量結果から導流堤周辺の地形変動を分析した.次に河口両岸の表層土砂試料および河口部鉛直コア試料に対して,粒度分布や長石粒子のルミネッセンス強度を計測し,それらと土砂動態の関連を議論した. 航空写真分析では、導流堤建設前には河口位置が南北に大きく変動していたことや、建設後には、左岸側で顕著な堆積が見られることが確認された。すなわち,沿岸漂砂の上手側にあたる導流堤左岸近傍には,捕捉された沿岸漂砂とともに一ツ瀬川から供給された細砂が地中深くまで均質に堆積しているのに対し,侵食が進む右岸側では河川供給土砂の堆積は少なく,約千年程度前の堆積土砂を含めて過去の海浜地形が侵食されつつあり,細砂層と粗砂層の互層が形成されていることが明らかとなった. 左岸側の熱ルミネッセンス強度は、南向きに単調に減少する傾向であるのに対し、右岸側では,近年実施されている大規模養浜の影響が検出された.鉛直コア試料の粒度分析より、左岸は細砂が均質に堆積しているのに対し、右岸では細砂層と粗砂層が互層を形成しており、近年の堆積過程に有意な違いがあることが示された。また、コア試料のルミネッセンス分析結果からは、侵食が進む右岸側の土砂の堆積年代は千年程度であり、過去の海浜が侵食されつつあることが明らかとなった。 以上より、本研究では、航空写真や測量結果の分析とルミネッセンス分析を組み合わせることにより、侵食過程を定量的に評価できることが明らかとなった。本研究の成果を応用すれば、従来、対症的に対応されていた侵食対策において、抜本的な対策立案ができることになり、社会的なインパクトが大きい。
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