研究課題/領域番号 |
24246086
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
灘岡 和夫 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (70164481)
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研究分担者 |
渡邉 敦 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00378001)
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
中西 康博 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (60246668)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 比較島嶼学 / サンゴ礁生態系 / 陸源負荷 / 生態系応答 / 地域社会 / 社会 / 物質 / マテリアル |
研究概要 |
奄美・琉球諸島のいくつかの代表的な島々において、環境負荷率,糞尿リサイクル率,農家所得,陸源負荷に対するサンゴ礁の脆弱性を表す礁池閉鎖度をそれぞれ指標化し,島嶼間及び経時的な比較を行うことで負荷生成構造の島嶼間の違いや歴史的変遷特性を明らかにした。そして、畜産に関する農家スケール経済-環境負荷生成モデルを基本単位とした島嶼スケールモデルを開発しシナリオ分析を行うことを通じて、より効率的な栄養塩リサイクル構造のあり方を検討した。 サンゴ礁生態系への栄養塩負荷量の実態把握のために、地下水経由負荷に関して鹿児島県与論島において18地点での地下水水質モニタリング調査を継続的に実施するとともに、大気降下物経由負荷に関して八重山地域での地理的・季節的変化のモニタリングを継続的に実施し、その成果を取りまとめているところである。また、イベント的負荷の台風に着目し、台風前後の採水・センサー測定により、周辺陸地から沿岸海域への淡水や濁度の波及状況、および栄養塩類や有機物等の水質を把握するための調査を石西礁湖・石垣島周辺海域で実施した。 観測・分析手法上の検討として、全炭酸の炭素安定同位体比を利用して群集代謝と地下水負荷の影響を比較する方法について検討し、数値モデル化を進めた。また、溶存有機物の炭素・窒素安定同位体比を利用した環境・代謝評価を試みた。 さらに、マングローブ生態系とサンゴ礁生態系との連関を解明する研究のひとつとして、マングローブが生成するタンニンによる林床土壌からの溶存鉄の溶出に関する一連の研究を実施した成果をまとめ、学術雑誌に掲載した。 サンゴ礁生態系応答モデルの高度化を図るとともに、マングローブ・海草藻場・サンゴ礁連成系全体としてのストレス応答過程を評価可能なモデルを構築するために、特にマングローブ域の水文・水質・生態環境について石垣島吹通川河口域において調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な研究項目の一つである、島嶼系での社会経済システムから見た陸源負荷の生成過程の解明に関して、畜産を主体とした負荷発生構造特性に関するいくつかの重要な指標を提起し、それに基づく島嶼間比較や経時的変遷特性の定量的な評価を可能にした。さらに、畜産に関する農家スケール経済-環境負荷生成モデルを基本単位とした島嶼スケールモデルを開発し、シナリオ分析を行うことを通じて、より効率的な栄養塩リサイクル構造のあり方の定量的検討を可能とした。 また、サンゴ礁生態系への栄養塩負荷の波及過程に関して,地下水経由、大気降下物経由、台風時出水経由といった、主要なパスに関するこれまでにない現地データの取得に成功するとともに、全炭酸の炭素安定同位体比を利用して群集代謝と地下水負荷の影響を比較する方法や、溶存有機物の炭素・窒素安定同位体比を利用した環境・代謝の評価など、新たな観測・分析手法の検討も具体化させた。 そして、サンゴ礁生態系応答モデルの高度化を図るとともに、マングローブ・海草藻場・サンゴ礁連成系全体としてのストレス応答過程を評価可能なモデル構築のための検討を、関連する現地調査とともに進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
島嶼系での社会経済システムから見た陸源負荷の生成過程の解明に関して、島嶼系での今後の持続的発展を検討する上でキーの一つとなる観光セクターに関しても検討対象に加え、その社会経済的調査を実施するとともに、観光に起因する負荷生成の普及啓発活動による制御可能性の定量的評価を試みる。 地下水経由、大気降下物経由、台風時出水経由等でのサンゴ礁生態系への栄養塩負荷の波及過程に関する現地調査をさらに発展的に継続するとともに、それらの定量的な評価のためのモデル開発を進める。 モデルシステムに関して、サンゴ群集、マングローブ林に加えて、海草藻場や干潟などの他の主要コンパートメントを加えた形の統合的沿岸生態系応答モデルへとモデル体系の高度化を図り、さらに上記の環境負荷生成・波及過程のモデル化とリンクさせることによって、社会構造-物質循環-生態系応答過程の統合システム解析と将来予測を試みる。
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