研究課題/領域番号 |
24246092
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米田 稔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40182852)
|
研究分担者 |
福谷 哲 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00332734)
池上 麻衣子 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (10625528)
松井 康人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50533501)
高岡 昌輝 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (80252485)
大下 和徹 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90346081)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 放射能 / 汚染 / 廃棄物 / 土壌 / 焼却 / 不溶化 / セシウム / 最終処分 |
研究概要 |
本研究では放射性Csで汚染された廃棄物の焼却処分を促進することを目的として研究を進めており、これまでに以下の研究成果を得た。 1)焼却処理対象物としての分流式下水道における汚泥への放射性Csの蓄積モデルを完成するとともに、森林域での除染廃棄物発生量を推定するためCsの環境動態シミュレーションモデルの精緻化も行い、3成分流モデルによって、精度良くシミュレーションできることを明らかにした。また、放射能で汚染された廃棄物の処理システムのモデル化を福島市について行い、各種評価基準の下での最適システムを提案した。 2)廃棄物にCsなどの非放射性核種を添加して熱処理した時のCsの挙動を追跡する実験を継続して、既存のバグフィルターによる分離効率は、現在、処理対象となっている廃棄物の濃度程度であれば、十分対応できることを明らかにした。また、昨年度において、特に飛灰からの放射性Cs溶出を抑制するためにアルミノケイ酸塩を主成分とするジオポリマーを利用することで、簡便でコンクリート固化などよりも不溶化率を高く出来ることを示したが、この方法の有効性をさらに多様な飛灰、焼却灰についても示した。 3)昨年度までの洗浄分級処理での各粒径への分布を調べた結果より、汚染土壌を数百度で熱処理した場合、土壌粒子の造粒効果によって微細粒子自体の割合が減少することなどが明らかになったが、汚染土壌を数百度程度で熱処理した場合、汚染土壌そのものからの溶出量も減少することを明らかにした。 4)実際の処理プラントでのデータ採取を継続し、各作業をシナリオ化し、廃棄物中濃度と区域内空気中の放射性物質濃度をパラメーターとした外部・内部被曝量評価を実施した結果、現在の処理場においては、ほとんど両被曝量ともに問題となるレベルではないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初、以下の4つの研究目標を設定し、それぞれについて、以下の進展状況にあることから、本研究は「概ね、順調に進展している。」と判断した。 1)放射能で汚染された焼却・熱処理対象物質の発生量予測:この研究目的に対し、分流式下水道における焼却処理対象物としての汚泥発生量を推定するモデルをほぼ完成した。合流式処分場のモデル化もほぼ確実に達成可能である。また、別途、森林中での短期から長期に渡るCs動態モデルの開発もほぼ完成に近づいている。これによって、森林域での除染廃棄物量の推定を精度良く行うことが可能となる。 2)焼却・熱処理における現状把握とCsの分離・濃縮・処分条件の最適化:この研究目的のため、現状調査により既に焼却処分における放射性Csの焼却灰や飛灰への分配比や濃縮率の多くの実績値を収集した。本研究では実用的な処分方法としてジオポリマーを用いたCs不溶化法を開発しており、本方法の有効性をすでに示している。よって、焼却処分から最終処分まででCs揮散の少ない安全性の高い処分方法を研究期間内に確実に提案可能である。 3)放射能汚染土壌の浄化処理における放射能濃縮効率の最適化:この研究目的に対しては、除染廃棄物のように大量の土壌を含んだ廃棄物の処理においては、数百度程度の熱処理を行うことで、有機物を燃焼させて減量するとともに、土壌からのCs溶出量も抑制できることを明らかにした。現実的な大量の汚染土壌の処分方法として、最適な方法の提案に近づいていると考えている。 4)労働者の被曝リスク評価と安全作業マニュアルの策定:この研究目的については、実際の2つの焼却処分場において収集した実測データに基づいて外部曝露量、内部曝露量の推定を行い、ダイオキシン対策などを施せば、ほぼ放射能汚染対策も十分であることを明らかにしつつある。よって、安全作業マニュアルの策定も完成に近づいていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究目標、現在までの達成度を考慮し今後、各目標に関し、以下のように研究を進める。 1)放射能で汚染された焼却・熱処理対象物質の発生量予測:現在、開発中である森林域でのCs動態モデル、都市下水におけるCs動態モデルに加え、各種処理システムにおける焼却・熱処理対象物質の発生量予測モデルを完成し、これに主として福島県における現在開発中の廃棄物流動モデルを組み合わせることで、今後必要となる焼却施設容量や処分場の容量などを推定するモデルを完成する。 2)焼却・熱処理における現状把握とCsの分離・濃縮・処分条件の最適化:焼却処分における現状把握については、さらに仮設専用炉に関する情報収集を続け、焼却条件と焼却灰や飛灰への分配比、濃縮率などの関係を明確にする。また、ジオポリマーを使用したCsの不溶化法なども、さらに様々な焼却残渣などに適用することで、その有効性を確立し、焼却から最終処分までの最も効率的な処理方法を提案する。 3)放射能汚染土壌の浄化処理における放射能濃縮効率の最適化:この研究目的に対しては、比較的有機分の多い汚染土壌の数百度程度の熱処理によって、有機物を燃焼させて減量するとともに、溶出率を抑制することが可能となることを明らかにしたことから、さらに汚染土壌をバイオマスと混焼した場合の効果なども明らかにするとともに、洗浄分級したCsを濃縮した微細土壌粒子に本方法を適用した場合の効果も明らかとし、最終処分までを見通した汚染土壌の処理法を確立する。 4)労働者の被曝リスク評価と安全作業マニュアルの策定:この研究目的については、さらに仮設専用炉などにおけるデータ収集にも努め、各単位操作に伴う被曝量の標準値を提案するとともに、作業員被曝量の簡便な計算モデルを完成する。また、ダイオキシンなど、他のリスクに対する対策も考慮して、実用性の高い安全作業マニュアルの策定を目指す。
|