研究課題/領域番号 |
24246094
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
元結 正次郎 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60272704)
|
研究分担者 |
水谷 国男 東京工芸大学, 工学部, 教授 (40468913)
脇山 善夫 国土技術政策総合研究所, 総合技術政策研究センター, 主任研究官 (50339800)
石原 直 独立行政法人建築研究所, 建築生産研究グループ, 研究員 (50370747)
山下 哲郎 工学院大学, 建築学部, 准教授 (80458992)
西川 豊宏 工学院大学, 建築学部, 准教授 (80594069)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 建築 / 天井 / 設備機器 / 耐震性能 |
研究概要 |
平成24年度はこれまで研究代表者などが行ってきた天井の耐震性能に関する研究結果を踏まえて、それを実証するための振動台実験ならびに数値解析的検討を行った。特に、最も広く普及している鋼製下地在来工法天井を対象とした天井の固有周期の算定法ならびに耐力評価に注目して検討を行った。天井の耐震性能を議論する上で、天井と壁の隙間の有無によって議点が異なるため、両場合に対する検討を行った。 天井と壁の隙間が十分にある場合、天井面は下地の変形を伴って水平に揺れる。そこで、野縁受け、ハンガー、吊りボルトで構成される吊り要素の水平剛性を既往の研究で提案されている手法を用いることで、天井試験体の固有周期および耐力を推定した。実験で観測された固有周期が推定値と精度よく一致していたことから、本手法の有効性が確認された。 天井と壁の隙間がない場合、天井慣性力が壁へ伝達される際に天井面の座屈の可能性と、動的外乱で生じる不可避的な隙間によって衝突現象が発生する可能性が考えられる。前者では、天井面が全体的に座屈する耐力を静的載荷実験によって確認した。部材間の偏心を考慮した天井の解析モデルを用いることで座屈挙動を概ね再現できたとともに吊ボルトの間隔が座屈耐力に影響していることを示した。後者の衝突現象に対しては、事前に行った石膏ボードを用いた比較的単純な要素実験をもとに、衝突振動解析の手法の構築をするとともに、衝突問題を論じる上で必要な物性値を実験的に取得した。ここで得られた成果をもとに、実際の天井へ拡張した試験体を対象に衝突振動解析を行った結果が実験結果を概ね捉えていた。衝突現象を再現できる有効な手法および物性値を確認することができた。 なお、これらの成果は日本・ニュージーランド・アメリカで行われた天井をはじめとする非構造材の耐震性能に関する国際会議、講演会およびワークショップにて発表している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、天井の耐震性に関わる法令化の作業が急務となり、主に天井を対象とした研究に重点を置いて天井の力学的な特性について優先してまとめを行った。ここでは、天井の固有周期の簡易推定法の有効性、部材偏心を考慮した天井解析モデルを用いた座屈耐力の評価の有効性、衝突現象を論じる上で重要な基本的物性値および振動応答解析の構築に関する成果を実験的および解析的に実証した。 本研究では、天井だけでなく天井懐に設置される空調用ダクト等の設備機器対象として、これらの耐震設計を行う過程で必要となる設計用地震力の設定、応力・変位の算定、応力の許容値の設定に関する具体的な方策の構築を目的としている。しかし、設備機器等に対する実験および解析的検討も視野に入れてきたが、先述を理由に具体的な実験等は行わなかった。次年度において、設備機器等に対する研究活動を重点的に行っていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に行うことが実施できなかった設備機器に関係した実験および解析的検討を重点的に行っていく。まず、設備機器に関する耐震性を論じるに十分な基本的特性を定量的に得る必要がある。特に、スプリンクラー配管の継手、配管やダクト、空調機を吊る際に用いる接合金物といった接合部は複雑かつ曖昧なものであるため、こうした部位を取り出した要素実験を各々行い、復元力特性ならびに崩壊形式といった力学的特性を明確にすると伴に詳細な解析モデルをする必要がある。次に各部位の力学的特性が明らかになった後、設備機器システムの振動実験および静的実験を行う。ここで確認されるシステムとしての挙動および崩壊メカニズムを、各部位の要素実験から得られた情報ならびに解析モデルをもとに再現解析を行い、実験結果の分析ならびに解析手法の構築を行っていく。 以上の内容を整理した上で、施工誤差などによるバラツキの影響を考慮した確率論的アプローチにより耐震性を論じていく。具体的には、各部位の種々の崩壊形式における耐力のフラジリティ曲線から設備機器システムとしてのフラジリティ曲線を示すことで設備機器の耐震性を論じていくことを目標とする。
|