研究課題/領域番号 |
24246101
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
西田 雅嗣 京都工芸繊維大学, その他部局等, 教授 (80198473)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 建築考古学 / ロマネスク建築 / 修道院建築 / 尺度論 / 様式論 / 建設技術 / 日仏比較建築論 / 日本建築 |
研究実績の概要 |
1.南ブルゴーニュのロマネスク建築(ウジとクルティル=ス=ビュフィエール)と南仏プロヴァンスのセナンク修道院の建築考古学・実測調査を実施した。ブルゴーニュではシャロレ=ブリオネ地方文化財国際研究センターの、セナンクでは修道院の協力を得て、諸許可・許諾や支援体制を取り付け、大学院生の研究補助者を伴い、海外共同研究者Alain GUERREAU・CNRS研究員らの参加も得て実施した。成果物の実測図面は、現在研究代表者の研究室で作成中で概ね完成している。2014年度の調査成果図面は、2015年度調査の際に建物所有者、調査協力機関、国の文化財担当機関へ供与した。 2.継続的に調査を行ってきたセナンク・シトー会修道院について、成果の一部である建築考古学論文を、査読付き学術論文として発表し得た。また、本研究の成果の一部を発表してきた幾つかのフランスでの学会、研究集会、国際会議等が、研究代表者西田の論考も収録して出版された。 3.建築史研究の方法と観点や建築観に関する日仏間の協力や交流として2014年に参画した、日仏中世建築シンポジウムの論文集のフランスでの出版・編集作業を行った。研究代表者西田と連携研究者佐藤・加藤の論文も収録され、西田が、海外共同研究者Nicolas Reveyron教授(リヨン大学第二)と共に編集・監修に当たっており、2016年9月に出版される。海外共同研究者の論文も収録される。 4.5月にフランス・シャルトルで開催されたゴシック建築に関する国際会議で講演を行い、研究成果の一部発表した。 5.本研究のテーマの一つである日本的建築観、日仏比較建築研究、日仏交流の点でも、本研究が関った伊勢神宮の式年遷宮に関する日仏共同研究の成果が、研究代表者西田と海外共同研究者Jean-Sebastien CLUZEL(パリ=ソルボンヌ大学)の編集でベルギーの出版社より仏語で出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に計画した実施項目は、ほぼすべてにわたって順当に実施できたと考えている。 年度当初に計画した、中断中のル・トロネ修道院建築を尺度論から論じた西田の著作のフランスでの出版作業を軌道に乗せられなかったことと、研究全体に関係する、ロマネスク建築を、実測図面を基に、「組積」・「寸法」・「形態」を分析し、「建物の使用」、「建設技術」、「象徴的意味」などの視点から吟味するという考察が順調ではない要素だが、前者については、出版社からの依頼で2017年度に向けて出版する予定で、出版作業再開の予定であり、後者については、本研究が明らかにしようとする大きな目標でもあり、研究の進捗、知見の蓄積に伴い、視点や考察の枠組みの変更があったとしても、それは研究成果として考えるべきものである。現在、当初考えていたような図式的で機械的な考察が、果たして、調査や研究交流を通じてきて見えてきたロマネスク建築像に相応しいものかどうかを検討すべき段階であり、これは、本研究にとってマイナス要素ではなく、我々の考えの成熟を意味するものである。 2015年に関して言えば、これまで本研究活動の一部として積極的に関わってきた幾つかのフランスでの学会、研究集会、国際会議等での本研究の成果の一部の公表が、研究代表者西田の論考として収録されフランスで出版されたことや、2014年に参画した、日仏中世建築シンポジウムの論文集が、Xavier I Altet(レンヌ大学名誉教授)他の海外共同研究者の論文も収録して、西田と海外共同研究者Nicolas Reveyron(リヨン大学第二)が編集・監修して2016年9月に出版すること、また日本的建築観、日仏比較建築研究、日仏交流の点で研究が関った伊勢神宮の式年遷宮に関する日仏共同研究の成果のフランス語で出版は、フランスでの発信や日仏共同を大きな目標の一つとする本研究の大きな達成である。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に最終年を迎える本研究にとって最も重要なことは、成果の公表である。また、研究活動を通じて築き上げてきた日仏の研究者交流・日仏共同をより推進することである。比較的短いスパンでの具体的なものとしては以下の4つの方針を考えている。 1. 2016年度中に、日本建築学会などで、なるべく多くの論文を発表する。これは、まだ発表できていない調査結果等の速報的な発表と、十分な考察が進捗した建築についての査読付き学術論文の執筆・公表で、ここの建築物についてのモノグラフ的な研究成果となる。もちろん2017年度以降も継続する。 2.南ブルゴーニュのクリュニー地方の小規模ロマネスク教会堂建築についてのモノグラフ集成の出版。すでに30件近くの教会堂を実測し正確な実測図面を製作しており、これらの公表を主眼とした、考古学的な建築研究出版を考える。2016年度は、とりあえず、海外共同研究者Alain GUERREAU(フランス国立科学研究センター)の論考や我々の学会発表論文も加えて仏語で私家版実測図面集を作成する。これをもとに、フランスでの本格的な出版に備える。 3.研究成果のフランスでの公表・出版を、積極的に機会をとらえて、2016年度以降も活発に行なっていく。当面、2017年に開催予定の国際会議を核とする、海外共同研究者Nicolas Reveyron(リヨン大学第二)らが企画する中世建築に関する共同研究計画の一翼を担うようにする。 4.日本的建築観、日本的方法論、などを通じて、積極的に日仏間での交流を軸にした研究に関与していく。フランスにある日本由来の建築などが、現在関与中の共同活動であり、今まで同様、この方面での共同研究・作業や、フランスでの日本建築に関する学術的な共同研究に関与し、成果公開を行っていく。
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