研究課題/領域番号 |
24246103
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米永 一郎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20134041)
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研究分担者 |
大野 裕 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (80243129)
徳本 有紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20546866)
沓掛 健太朗 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00463795)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 半導体物性 / 転位ナノ物性 / ワイドギャップ半導体 / 転位動特性 / 転位電子光学特性 |
研究概要 |
本研究は、III-Vナイトライド、II-VI亜鉛系化合物、IV族化合物等のワイドギャップ半導体結晶について、(1)転位の運動機構を解明すること、(2)転位の原子構造と電子構造・物性、さらに熱処理や電子・光・エネルギー励起による変性を調べ、転位に付随する電気・光学特性を明らかにすること、(3)ワイドギャップ半導体における転位の運動と電子・光学物性の両面について基礎知識を確立し、さらに転位特性がそれぞれの結晶で発現する機構を、Si、GaAs等を含めた全半導体での基礎学理として体系化し、実用化の指針を提示することを目的とする。 本年度は(1)AlN結晶を電子顕微鏡内でナノインデンテーション法により変形させ、転位が発生する挙動から、すべり面の特定に成功した。またAlGaN混晶についてナノインデンテーション法を利用した硬度特性評価から固有の混晶効果を発見した。(3)GaN結晶中のフレッシュな刃状転位に沿う電荷の存在と、さらに走査型抵抗顕微鏡により転位に沿った電気伝導を見出し、それがFrenkel-Poole機構であることを解明した。(4)ZnO結晶柱面上に高密度に導入されたフレッシュな刃状転位の有する光学特性から、転位のアクセプタレベルが発光の原因であることを特定した。(5)SiC結晶の30度部分転位が電子線の照射下で運動し、その結果部分転位間の積層欠陥が拡張・収縮する挙動をその場観察しし、転位運動の素過程として、キンクが照射下でのみ、その照射強度に依存して運動する機構を見出した。さらに、(6)非極性GaNのサファイヤ基板上でのエピタキシャル成長時のドメイン形成が格子定数を同じにするa軸に沿ったa-c面変換機構であることを見出し、エピ成長方位の制御の可能性を提示した。(7)ZnOの不純物添加による結晶性と特性制御に関する指針を提示することを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるワイドギャップ半導体における転位の運動機構の解明と、その電子・光学特性の解明に対して、現時点で、順調に推移している。特に、GaN、AlNとZnOでの転位の運動特性とその物性の解明は予定以上に進んだ。予定外にAlGaN系混晶での硬度特性からの転位運動の評価ができたことと、ZnO結晶の育成に係る欠陥に係る論文が発表できた。その結果、主たる成果として、国際学術誌へ論文8編、国際学会を含め、発表6回を行うことができた。今後、新規導入された装置類をフルに活用し、より詳細な研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、前年度の状況と成果を基盤に、AlN結晶転位の動特性のより詳細な知見の確立と、これまで研究実績報告が全くないInN 結晶とII-VI 族亜鉛化合物であるZnTe、ZnSe、ZnS 結晶およびSiC 結晶を対象とする。特に、InN 結晶については、計画変更により新規導入するナノインデンテーション装置により転位の運動特性を評価する。そして、転位個々の有する電子・光学特性を明らかにする。 (1)確立した圧縮・曲げ変形法とエッチピット法を用い、AlN、ZnTe、ZnS、SiC結晶中で転位が外部応力のもとで発生し、運動する挙動とその速度を応力と温度の関数として定量化する。また、ナノインデンテーション法により、InNの微小硬度から転位運動特性を導出する。(2)転位が導入された結晶の電気・光学特性をホール係数測定法、フォトルミネッセンス法、光吸収法、DLTS法のマクロな評価を用いて、それらの測定温度依存性を含めて定量化し、転位の有する電荷量、電子準位を明らかにする。(3)結晶中に導入された転位の特性を、高分解能電顕法およびウィークビーム法を用いて決定し、さらに原子構造を明らかにする。(4)変形によって導入された一本一本の転位の電子・光学的特性を電子顕微鏡内に設置した近接場光学分光PL法とCL法によりミクロなスケールで明らかにする。(5)転位の有する電子・光学特性が熱処理や電子・光エネルギー照射によってどのように変性するかを温度、時間、エネルギー値、強度の関数として、マクロおよびミクロスケールで定量評価し、転位の性質の変性機構を解明する。(6)III-VナイトライドとII-VI酸化物およびII-VI化合物、そしてSiC結晶における結果を比較・検討し、転位の結晶物性への影響を総合的に明らかにする。
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