研究課題/領域番号 |
24246107
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
八島 正知 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00239740)
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研究分担者 |
石原 達己 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80184555)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオン伝導体 |
研究概要 |
(A1-xA’x)2(B1-y-zB’yB’’z)O4+δおよび(A1-xA’x)2(B1-y-zB’yB’’z)2O5+δ (δは過剰酸素量)試料を合成し、その結晶構造と電気的性質を評価した。酸素透過率が高い試料であるPr2(Ni0.75Cu0.25)0.95Ga0.05O4+δおよびPr2(Ni0.75Cu0.25)O4+δ、ならびに参照試料であるSr2Ti0.9Co0.1O3の中性子粉末回折パターンと放射光粉末回折プロファイルを測定し、リートベルト法および最大エントロピー法により解析した。Pr2(Ni0.75Cu0.25)0.95Ga0.05O4+δにおけるd10 Gaの役割を解明することに成功した。ガリウムと銅を添加すると、大量の酸素原子が格子間に入って酸素透過率が高くなることが分かった。さらに理論計算による検証を重ねた結果、添加したガリウムによって酸化物イオンが格子間に入ることが分かった。また通常、格子間酸素O3は格子頂点酸素O2と静電的な反発を起こすため、格子間に入りにくいが、銅を添加することで格子O2の位置がずれやすくなり、格子間酸素O3が安定化されることが分かった。さらに、温度を室温(20℃)から高温(約1000℃)まで上昇させると、格子間酸素O3と格子酸素O2の分布が連結して酸化物イオンが移動する様子が確認された。d10 Gaは酸素との配位状態が柔軟であることが原因の一つとなって、格子間酸素を取り込みやすいと考えられる。本成果は米国化学会の学術誌Chemistry of Materialsに掲載された。さらに、この成果を踏まえて、d10元素を含む新しいイオン伝導体である新物質探索に取り組んでおり、有望な結果が得られつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プラセオジム・ニッケル酸化物にガリウムと銅を添加することにより、酸素透過率が高くなる仕組み、また、この添加した酸化物中に動きやすい酸素原子が大量にできる仕組みは長年わかっていなかった。この未解決問題を、酸素透過率が高い試料であるPr2(Ni0.75Cu0.25)0.95Ga0.05O4+δおよびPr2(Ni0.75Cu0.25)O4+δ、ならびに参照試料であるSr2Ti0.9Co0.1O3の中性子粉末回折パターンと放射光粉末回折プロファイルを測定し、リートベルト法および最大エントロピー法により解析することにより明らかにできた。d10元素であるGaの役割を明確に示したことにより、新しいイオン伝導体の開発や、固体酸化物形燃料電池の性能向上等が期待されるなど画期的で、当初の計画以上に本研究課題は進展しているとみなせる。 更に、本課題は、d10元素を含む新しいイオン伝導体の開発に取り組んでおり、(A1-xA’x)2(B1-y-zB’yB’’z)O4+δおよび(A1-xA’x)2(B1-y-zB’yB’’z)2O5+δ (δは過剰酸素量)が発見できそうな予備的な結果も出てきている。特に注目すべき予備的な結果は、過去に全く報告がない「新しい結晶構造の型」が見つかりそうなことであり、新しいタイプのイオン伝導性材料への展開も期待される。 本課題は、結晶構造に基づいた新物質の探索であり、平行して既存の類縁材料の精密構造解析や理論評価も行っている。ぺロブスカイト型ABO3酸化物の電子密度解析にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギーおよび環境分野において、イオン伝導体の開発がキーになっている。本課題は近年、発展が著しいd10などの金属酸化物における酸素イオン伝導の発現機構、特に構造的要因を解明して、より優れたイオン伝導体を開発することである。申請代表者が発展させてきた高温における構造解析法を、分担者石原教授らが開発しているd10などの金属酸化物をベースにしたイオン伝導体(今年度はPr1.9NiO4系材料)に応用し、酸素イオンの拡散経路とホールが伝導する経路を回折実験と理論計算を組み合わせて解明する。高温における精密結晶構造解析に基づいて新しい物質系をデザインして、より大きな酸素イオン伝導性を有する材料を探索することが目標である。 多彩なd10などの金属酸化物イオン伝導体におけるイオンの拡散経路の体系化と、それに基づいた材料の構造設計を可能にして、燃料電池材料の開発を目指す。d10元素を含む新しいイオン伝導体の開発に鋭意取り組み、(A1-xA’x)2(B1-y-zB’yB’’z)O4+δおよび(A1-xA’x)2(B1-y-zB’yB’’z)2O5+δ (δは過剰酸素量)が発見できそうな予備的な結果について、データを積み重ねて新物質発見に結び付ける。特に力を入れるのは、過去に全く報告がない「新しい結晶構造の型」の探索であり、新しいタイプのイオン伝導性材料への展開を目指す。 本課題は、結晶構造に基づいた新物質の探索であり、平行して既存の類縁材料の精密構造解析や理論評価も行っていく。
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