研究課題/領域番号 |
24246110
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西野 孝 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40180624)
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研究分担者 |
本郷 千鶴 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10418767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複合材料・物性 / 環境材料 / ナノ材料 / 高分子構造・物性 / バイオマス |
研究実績の概要 |
ポスト・カーボンナノチューブ素材を駆使した環境調和型複合材料の創製にあたり,本年度は以下の3テーマに重点を置いて研究を進め,以下の結果を得た。 ①ポストナノチューブ機能性ナノ粒子存在下でのセルロースナノ繊維のin situ培養,複合材料化と機能追求:ナノ粒子を巻き込む形でのバクテリアセルロースのin situ培養を行った。昨年度までにナノ粒子としてナノダイヤモンド(ND)とモンモリロナイト,グラフェンオキサイドを取り上げて複合材料の創製に成功し,得られた複合材料が優れた力学物性を示すことを明らかにした。それらに加えて,今年度はチタン酸バリウム存在下でのin situ培養に成功した。 ②汎用高分子,バイオ高分子との環境調和プロセスを用いた複合材料の機能展開:昨年度は汎用高分子としてアイソタクチックポリプロピレン(PP)を取り上げ,NDとの複合化を試みた。同複合材料ではNDの導入により,引張強度と破断伸びの相反物性を同時に増加させることが可能となり,わずか0.1%の添加でPPのタフネスを3倍にすることに成功した。この物性の発現機構について検討した結果,NDがPPの結晶核剤としての役割を果たし,球晶の微細化をもたらし,これがタフネスの発現要因であることを明らかにした。 ③ナノダイヤモンドを利用した高弾性率・高強度・高熱伝導を併せ持つAll-セルロース複合材料の創製:セルロース繊維表表面に予めナノダイヤモンドを吸着させ,その上でマトリックスとしてのセルロースと複合化を行うことで,NDが繊維に沿って配列したAll-セルロース複合材料の創製を試みた。その結果,元来の高強度,高弾性率に加え,高い熱伝導率(11W/mK)を達成した。一般の高分子の熱伝導率が0.1W/mK程度であるのに比較して,この値は10倍以上であり,電子デバイスの熱対策として有望であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの3年間において,ポストカーボンナノ材料を導入した環境調和複合材料を5種類以上創製できた。これらはいずれも,従来の複合材料の概念,物性を大きく変革する材料ということができ,研究は順調に推移している。たとえば,10W/mKを超える熱伝導率はナノダイヤモンドの特性を利用して初めて得られる高い値であり,プロセスを含めて環境調和性を併せ持っていることから,当初目的に叶った材料創製に成功した。その結果,最終年度に向けて,より一層の高性能化,学術機構の解明,成果の公表に向けて邁進することができる段階に達しており,順調に進展していると評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
ポスト・カーボンナノチューブ素材として,ナノダイヤモンド,グラフェン/グラフェンオキサイドナノ粒子を導入した環境調和複合材料で,1%以下の極少量充てんにより飛躍的に力学物性が増加することを見出してきた。本年度は力学物性以外の多彩な物性発現をめざし,電界紡糸によるナノファイバーを利用したナノ粒子のパーコレーションにより,熱物性(熱伝導度),電気物性(電気伝導度)の観点からの検討を図る。また炭素ナノ材料以外の素材へも研究を展開する。 これらの研究の継続的な実施に加え,最終年度にあたり,研究の総括として国内外での学術成果の発表,学術論文執筆,総説,解説の執筆にも注力し,同材料の普及活動にも従事する予定である。
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