研究課題/領域番号 |
24246114
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 伸泰 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30263213)
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研究分担者 |
柴田 曉伸 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60451994)
寺田 大将 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80432524)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属材料 / 組織制御 / 強度 / 延性 / 靱性 / 結晶粒 / 粒界 / 塑性不安定 |
研究概要 |
金属材料において、強度と延性(加工性・靱性)は、片方を高めようとするともう一方が犠牲になるトレードオフの関係にあり、強度と延性の両立は、目標ではあっても現実味がなかった。しかし近年、研究代表者は超微細結晶粒材料に関する研究を通じ、強度と延性の両立を可能とする指導原理の一端をつかんだ。本研究は、こうした知見を超微細粒材に限らず金属材料一般に普遍化することが可能かどうかを、(1)微細粒子分散組織、(2)硬質相と軟質相の二相混合組織、(3)バイモーダル組織という3種類の異なる材料組織を対象に、鉄系および非鉄系合金を用いて広範囲の粒径に対して実験的に明らかにし、強度と延性を両立させた夢の構造材料の実現のための基礎的学理(強度・延性両立のための材料組織制御原理)を構築しようとするものである。 本年度の研究の第一の目的は、塑性不安定現象により均一延性が規定されるという理解のもと、強度と均一伸びの両立を、鉄系及び非鉄系合金の「微細粒子分散組織」「二相混合組織」「バイモーダル組織」という3種類の組織において、幅広いマトリクス粒径で系統的に明らかにし、強度・均一伸び両立のための指導原理を獲得することである。また、局部伸びにも注目し、強度・局部伸び両立のための指導原理を獲得することを第二の目的とする。こうした目的の下、以下の研究成果を得た。 マトリクス粒径を広範囲に変化させた微細粒子分散組織、二相混合組織、バイモーダル組織を、マルテンサイト法、ARB法と熱処理を最適に組み合わせたプロセスを用いて創製した。一方、種々の材料組織を、FE-SEM/EBSD法、STEMおよびXRDによる転位密度測定、SEM, TEM等の手法により定量化した。一部の試料に対して力学特性を測定し始めるとともに、すでに研究室で開発済みの3次元くびれ解析システムと光学的全視野ひずみ測定解析プログラムの高度化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定以上の研究が進展し、フェライト+マルテンサイト二相鋼において、強度と延性を両立させるために最適な組織分布形態が明らかになった。また、Fe-Mn系合金において、平均粒径400nmの完全再結晶組織を得ることに成功し、またその材料が、単相超微細粒組織であるにもかかわらず高い強度と大きな延性を両立するという、予想外の優れた結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、マトリクス粒径を広範囲に変化させた微細粒子分散組織、二相混合組織、バイモーダル組織を、マルテンサイト法、ARB法と熱処理を最適に組み合わせたプロセスを用いて、広範囲の加工熱処理条件の下創製する。、それらの材料組織を、FE-SEM/EBSD法、STEMおよびXRDによる転位密度測定、SEM, TEM等の手法により定量化していく。 平成25年度は、分散状態を変化させた「二相混合組織」(フェライト+マルテンサイト二相鋼)の力学試験を系統的に行うとともに、昨年度高度化を行った3次元くびれ解析システムと光学的全視野ひずみ測定解析システムを用いた変形解析を実施する。また、、Al合金の溶体化材に巨大ひずみ加工を施して超微細粒マトリクス組織を作製した後、時効熱処理を行って、超微細粒内に微細析出物を分散させた「微細粒子分散組織」に対しても、同様の力学特性解析を行い、ともに、組織と力学特性の相関を明らかにする。さらに、純銅を用いて巨大ひずみ加工と低温を組み合わせることによって、「バイモーダル組織」の作成条件を明らかにする。
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