研究実績の概要 |
金属材料において、強度と延性(加工性・靱性)は、片方を高めようとするともう一方が犠牲になるトレードオフの関係にあり、強度と延性の両立は、目標ではあっても現実味がなかった。本研究は、研究代表者が超微細粒材で最近得た強度・延性両立のための指針を超微細粒材に限らず金属材料一般に普遍化することが可能かどうかを、(1)微細粒子分散組織、(2)硬質相と軟質相の二相混合組織、(3)バイモーダル組織という3種類の異なる材料組織を対象に、鉄系および非鉄系合金を用いて広範囲の粒径に対して実験的に明らかにし、強度と延性を両立させた夢の構造材料の実現のための基礎的学理(強度・延性両立のための材料組織制御原理)を構築しようとするものである。 本研究により、高強度材における引張延性の低下は、多くの場合塑性不安定の早期発現により説明でき、従って材料の加工硬化能を向上させることが重要である点が、確認された。金属材料の強度と延性の両立のために以下の方策が有効であることが明らかとなった。(1) Al-Ag, Al-Cu, Al-Mg-Si合金などのアルミニウム合金を用いた研究により、強加工によるマトリクスの微細化にナノ析出物を重畳させることによって、マトリクスの加工硬化が促進され、延性を向上させることが可能であることが判明した。(2)軟質相と硬質相からなる二相混合組織は、高強度と大延性の両立に極めて効果的であることが明らかとなった。その典型例はフェライト+マルテンサイト二相鋼であり、硬質相であるマルテンサイトをネットワーク状に配置させることが重要であることを、DIC解析などにより見出した。(3)銅合金に加工熱処理を施してバイモーダル微細粒組織を作り込むことに成功し、そうした試料が高い強度と比較的大きな延性を両立させることを見出した。
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