研究課題/領域番号 |
24246117
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
粉川 博之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10133050)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 粒界工学 / 対応粒界 / オーステナイトステンレス鋼 / ニッケル合金 / 加工熱処理 / 熱影響部 / 粒界腐食 / 粒界性格分布 |
研究概要 |
通常の金属材料は多結晶体であり、粒界劣化現象が材料の性能や寿命・安全性を低下させていることが多い。申請者らは、粒界劣化を引き起こしにくい対応粒界を材料中に高頻度に導入することで、化学組成を変えることなく、材料の性能を飛躍的に向上させる粒界工学の手法の有効性を実験的に検証してきた。本研究では、これまでの実績をもとに、申請者らが開発した粒界工学制御型加工熱処理法をさらに広く一般的な材料に適用して、粒界工学制御材料の安定的かつ効率的生産プロセスを確立し、得られた粒界工学制御材料の諸特性を評価し、高度な粒界工学制御が材料の種々の粒界劣化現象に対して高い耐性を示すことを実証し、材料の従来性能限界の飛躍的超越と粒界工学に基づく材料設計・開発原理の構築を目指す。 本年度は、昨年度に引き続き、種々のオーステナイト系ステンレス鋼とニッケル合金に対して粒界工学制御型加工熱処理を実施し、粒界性格分布と対応粒界頻度に及ぼす加工熱処理パラメータの影響のデータを蓄積して、材料による最適化条件の違いとその理由を検討した。その結果、最適化条件に積層欠陥エネルギーが関係していることが示唆され、オーステナイト系ステンレス鋼よりニッケル合金の方が短時間で最適化される傾向にあることがわかった。また、昨年度に引き続き、粒界工学制御後に冷間による塑性ひずみを付加した後、鋭敏化熱処理を実施し、腐食性と機械的特性への影響の調査を続けた。その結果、AISI200系オーステナイトステンレス鋼では粒界工学制御により機械的性質を低下させることなく高い耐粒界腐食性を付与できることを明らかにした。また、時効硬化型のニッケル合金でも粒界工学による耐粒界腐食性の向上が見られ、機械的性質の低下はほとんど見られなかった。以上の結果から、材料組成を工夫することで、機械的性質を維持したまま粒界劣化現象を抑制する粒界工学制御が可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、種々のオーステナイト系ステンレス鋼とニッケル合金に対して粒界工学制御型加工熱処理を実施し、最適な粒界性格分布と高い対応粒界頻度が得られる条件に積層欠陥エネルギーが関係していることが示唆され、オーステナイト系ステンレス鋼よりニッケル合金の方が短時間で最適化される傾向にあることがわかった。AISI200系ステンレス鋼や時効硬化型ニッケル合金で、機械的性質を維持したまま粒界劣化現象を抑制する粒界工学制御が可能であることが示された。以上の実績から初期目的に対してほぼ順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
粒界工学制御技術をさらに広範囲の材料に対して適用するとともに、さらに多くの粒界劣化現象に対して粒界工学の効果を検証する。また、現時点での粒界工学制御のための加工熱処理時間が長いので、実用化に向けて粒界工学制御プロセスの短時間化を検討しており、いくつかの方法でその実現可能性が示されつつある。
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