研究課題/領域番号 |
24246119
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山中 一司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00292227)
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研究分担者 |
小原 良和 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90520875)
辻 俊宏 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70374965)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非破壊検査 / 非線形超音波 / 分調波 / 閉口き裂 / 時間分解能 |
研究概要 |
圧縮残留応力や酸化膜生成により閉じたき裂は超音波を透過させるため、線形超音波における計測誤差が懸念 されている。この解決策である非線形超音波では大振幅超音波を入射し閉じたき裂を開かせることで発 生する非線形成分を検出する。しかしこのうち高調波は、電気回路、圧電素子およびカップラントでも発生するため、き裂で発生した高調波との区別が容易でないほか、時間分解能が低いためき裂深さ測定は実現できていない。 応募者らが開発した分調波を用いたフェーズドアレイ(SPACE)は、初めて閉口き裂の深さ 測定を実現し共焦点方式により方位分解能も向上したが、き裂の深さを計測する時間分解能は十分ではなく、線 形散乱体によるゴーストの問題もあった。 そこで本研究では、分調波応答の入射波振幅への強い依存性を利用した時間分解能向上とゴースト除去法を開 発し、短パルスの使用により時間分解能を向上して標準閉口き裂で検証した後に、鋼管加工プロセス中に発生する閉口き裂のオンライン検査法を開発して、社会的な貢献を実現することを目標とする。 24年度は、本研究の初年度として高時間分解能SPACE用プログラムの開発、振幅差分法の定式化とシミュレーションによる検証および2段階法による閉口SCC試験体の作製を行った結果、計画通りに進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の研究が計画通り進展したため (1)高時間分解能SPACE用プログラムの開発 高時間分解分調波映像装置に必要な回路の機能を検討し、基本仕様を決定した。また、送信の焦点を走査し、各焦点位置ごとにチャンネル受信波形のフィルタ・開口合成処理を行うアルゴリズムを構築し,基本(fundamental array:FA)像と分調波(subharmonic array:SA)像を形成するプログラムを作成した。 (2)振幅差分法の定式化とシミュレーションによる検証 SPACEによって閉口き裂および線形散乱体がある試料を観察する場合、一定のしきい値以下の入射波振幅に対する閉口き裂の分調波応答は小さいが、しきい値以上の入射波振幅に対し急激に増加する。そこでこの点に着目して大振幅の映像から小振幅の映像の振幅比倍を引いて線形散乱体のゴーストを除去し、閉口き裂のみの像を得るアルゴリズムを定式化し、プログラムに実装した。さらに減衰2重節点(DDN)モデルとFDTD計算を縦き裂を含む場合に拡張し、SPACEによる縦き裂の映像と比較することでシミュレーション精度を検証した。次に、振幅差分法の原理を、上記シミュレーションにより検証できた。 (3)2段階法による閉口SCC試験体の作製 開口SCCを有するステンレス鋼やインコネル試験体を導入して、1000時間以上高温高圧水に浸漬することでき裂面を酸化させるため、高温高圧水オートクレーブを購入した。また、これまで開発した微細加工技術に基づき、耐高温ニオブ酸リチウム(LN)探触子を作製して、オートクレーブ中酸化閉口過程を測定する準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)高時間分解能SPACEの構築 昨年度開発した共焦点SPACE用プログラムを実装し、新に作成するバースト発生回路を導入して、高時間分解SPACEを構築する。 (2)振幅差分法の定式化とシミュレーションによる検証 昨年度考案した基本波の振幅差分法をSPACEに実装し、これまで開発してきたFDTD法による閉口き裂解析用DDNプログラムを適用して、振幅差分法の有用性を検証し、最適な適用条件を検討する。 (3)2段階法による閉口き裂試験体の作製 昨年度導入した高温高圧水オートクレーブを用いて、インコネル600溶接金属に高C量インコネル600溶接金属を埋め込みテトラチオン酸中、引張応力250~300MPaで導入したSCCや、疲労試験機で導入した疲労き裂CT試験片に引張応力を付加したものを高温高圧水に2000時間程度浸漬する。これにより形成された酸化物による閉口状態を、SPACEやCスキャン映像装置により解析する。 (4)電縫鋼管オンライン検査の検討 昨年度と異なる溶接条件で溶接した電縫管に閉口き裂を作製し、高時間分解SPACEによる評価を開始する。この際、水と鋼管界面での屈折は補正し集束ビームの収差を最小化する。また鋼管は圧延ロールで保持されているが1mm以下の振動があるため、鋼管表面エコーを用いて変位を計測し、屈折補正に反映させる。
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