研究課題/領域番号 |
24246123
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 秀士 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30117254)
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研究分担者 |
津守 不二夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10343237)
姜 賢求 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30599981)
長田 稔子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90452812)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MIM / ヘテロ組織 / ネット構造 / 転造 / 超強靭化 |
研究概要 |
精密複雑な形状製品をネットシェイプで得られる金属粉末射出成形(MIM : Metal Injection Molding)技術を基礎に、分散相などによる機能性の付与と伴に添加成分粉末の焼結時に生成する不均一相を積極的に利用して、超強靭化のためのマイクロレベルのヘテロ組織の形態と形成過程の解析を行う。さらには、局所複合あるいは複相の組織形成能の高さを利用した粉末冶金独特のヘテロ組織ネット構造を、旧来の金型プレス成形を基本とした粉末冶金(P/M: Powder Metallurgy)技術により実現し、高負荷大形部材への適用も視野に入れた新しい指導原理に基づく焼結合金鋼の超強靭化の達成を目指すものである。 そのため、平成24年度では先ずMIMにより超強靭な特性を得るには、合金成分量だけでなく炭素量の大小についても検討し、0.4、0.5、0.6mass%の炭素量が得られる脱バインダおよび焼結条件を見出した。ついで各種焼結試料の引張特性を調査し、合金成分や炭素量の組成との関係について検討し、最も引張特性に優れる最適な組成(6mass%Ni-0.4mass%C)、焼結条件(1250℃×1hr、真空)、熱処理条件(960℃×30min溶体化後油焼入れ、200℃×1hr焼戻し、Ar)を見出し、ヘテロ組織形態の最適化による超強靭な特性(最大引張強さ2040MPa、伸び8%)を得ることができた。次に、詳細な組織解析とそれを基に有限要素法による力学的シミュレーションを行い、均一相より不均一相すなわちヘテロ組織の優位性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究より高性能な特性を示した混合粉末によるFe-Ni合金鋼においては、Ni粉(平均5μm)の凝集(10~40μm)に起因してヘテロ組織が出現したことから、凝集という自然現象にたよるのではなく、人工的に創製可能な大きさの異なるNi粉(6、16、24μm)を用いてNi量を4、6、8mass%に変化させた混合粉末と、ワックス系バインダとを加熱混練したのち、現有の型締50tの射出成形機を用いて先ず健全な射出成形材を得るための成形条件を確定した。また超強靭な特性を得るためには、前項の合金成分量だけでなく炭素量の大小についても検討し、0.4、0.5、0.6mass%の炭素量が得られる脱バインダおよび焼結条件も確定した。 次いで、各種焼結試料の引張特性を調査し、合金成分や炭素量の組成との関係について検討し、最も引張特性に優れる最適な焼結・熱処理条件を見出し、ヘテロ組織形態の最適化により、2000MPaを越える強度と10%に近い伸びの超強靭な特性の発現を絞り込むことができ、文献索引により著書の知る限りでは、焼結合金鋼の引張特性のWorld Recordに匹適するものと思っている。 次に、詳細な組織解析とそれを基に有限要素法による力学的シミュレーションを行い、均一相より不均一相すなわちヘテロ組織の優位性を確認することができた。ただ、組織観察はあくまでも2次元的なものであるから、3次元の立体化をシミュレーションにより画像化し力学的特性も計算に加味して、超強靭的な特性を発現するためのネット構造制御までは至っていないので、次年度以降での課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、動的破壊試験ならびに組織解析と3次元での力学的シミュレーションを行う。 前記次項にて厳選された組成系の衝撃ならびに回転曲げ疲労試験片を作製し、熱処理後、液体窒素温度から高温(473K)に至る広範囲な温度域での衝撃特性について調査するとともに、回転曲げ疲労試験による疲労特性についても調査し、それらの動的破壊挙動について詳細な解析を行う。両静的ならびに動的破壊特性に関しては、組織との関連性も大きいことから、レーザ顕微鏡やSEM、画像解析装置などの新規設備を用いた組織観察や元素分析ならびに相の同定とともに、予想される不均質組成の分散状況とき裂進展との関係についても定量的評価を試み、超強靭な特性発現の原因を追究する。なお、組織観察はあくまでも2次元的なものであるから、3次元の立体化をシミュレーションにより画像化し力学的特性も計算に加味して、超強靭的な特性を発現するためのネット構造制御とともに指導原理の構築を試みる。金属粉末の焼結拡散理論ならびに力学等のシミュレーションに関し、サンディエゴ州立大学のGerman教授にMIMプロセスによるヘテロ組織構造体の寸法精度に及ぼす焼結収縮挙動ならびに強度シミュレーションに対する指導も仰ぐ予定である。
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