研究課題
基盤研究(A)
本研究開発課題は,「粒界工学」に基づいた精密な粒界微細組織制御により,超環境耐久性を有する超々臨界圧発電用フェライト系耐熱鋼の開発を行ない,温室効果ガスの排出削減による低炭素社会の構築に寄与する技術を確立することを目的として実施している。H24年度は,主にフェライト/マルテンサイト系耐熱鋼T91およびSUH3鋼を用いて下記の研究を実施した。得られた主な成果は以下の通りである。1.マルテンサイト粒界微細組織制御のための最適加工熱処理条件の検討熱間圧延と焼鈍を組合わせた粒界工学手法により高温オーステナイト相に高頻度の焼鈍双晶を導入することで,相変態後のマルテンサイト微細組織における対応粒界頻度,特に旧オーステナイト粒界の対応粒界頻度を著しく高めることができることを明らかにした。また上記組織制御により,マルテンサイトサブブロック組織が微細化することを見出した。さらに,これらの結果に基づいて粒界制御の最適条件(オーステナイト化処理温度,圧延率,焼鈍温度,時間)を検討した。なお,本粒界制御方法はフェライト/マルテンサイト系鋼の鋼種によらず有効であることを確認している。2.粒界制御された材料の焼戻し処理条件の検討上記の粒界制御によって対応粒界頻度を高め,サブブロック組織を微細化することにより,焼戻し処理により析出するM23C6炭化物がサブブロック上に微細に分散すること,旧オーステナイト粒界や粒内での析出物の粗大化が抑制されることを明らかにした。また,最適な焼戻し温度を検討した結果,800°Cにおいて,最も析出密度が高く,均一で微細な粒子分散組織が得られることを見出した。この結果は,粒子分散強化を主たる強化機構とするフェライト/マルテンサイト系耐熱鋼の耐高温クリープ特性の向上に有効であると期待される。次年度には高温クリープ試験により,粒界制御の有効性を確認する予定である。
2: おおむね順調に進展している
H24年度の研究により,最適な粒界制御条件および焼戻し処理条件を明らかにすることができた。次年度以降,粒界制御された材料を用いて特性評価を行い,粒界制御の効果を検証して行く予定である。このように,本研究課題は研究調書に記載した計画にそって順調に進展している。
平成25年度から26年度にかけて,最適粒界制御された材料の特性評価を行い,その結果をフィードバックして,必要であれば最適粒界微細組織および粒界制御方法の再検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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