研究課題
本研究課題は,「粒界工学」に基づいた精密な粒界微細組織制御により,超環境耐久性を有する超々臨界圧発電用フェライト系耐熱鋼の開発を行い,二酸化炭素排出削減による低炭素社会の構築に寄与する技術を確立することを目的としている。H25年度は,主に粒界制御されたフェライト鋼の高温変形挙動および耐水蒸気酸化特性の評価を行った。得られた主な結果を下記に示す。1. 粒界制御9Crフェライト鋼T91の高温変形挙動粒界制御および粒界非制御T91鋼について,大気中,温度873 K - 973 K,初ひずみ速度1.1xE-5 - 5.4xE-3 1/sの条件で高温引張り試験を行った。降伏応力(0.2%耐力)と塑性ひずみ速度との関係を調べたところ,いずれの試料においても応力指数が約12-16と非常に大きく,分散強化合金の特徴的な挙動を示した。一定応力で比較した場合,粒界制御材の方が非制御材に比べ塑性ひずみ速度が1-2桁程度低下することが見出された。一方,粒界非制御材では,しきい応力以下の低応力域において応力指数が約2まで小さくなる領域が観察され,変形中に粒界すべりが生じている可能性が示唆された。このような応力指数の小さな変形領域は粒界制御材では観察されなかった。さらに,高温変形後の組織観察において,粒界制御材は非制御材に比べ,旧オーステナイト粒界上の析出物の凝集粗大化が抑制されていた。2. 粒界制御フェライト鋼の耐水蒸気酸化特性粒界制御した10Crフェライト鋼SUH3を温度873K - 1073Kにおいて水蒸気環境下に24時間保持し,耐水蒸気酸化特性を評価した。粒界制御材および非制御材とも,初期界面を境にFe3O4の外部スケールとFeCr2O4とFe3O4から構成される内部スケールが形成された。しかしながら,いずれの温度においても,粒界制御材において酸化スケール層の成長が著しく抑制されることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
H24年度の研究により得られた最適粒界制御条件に基づいて粒界制御されたフェライト系耐熱鋼の高温力学特性および耐高温水蒸気酸化特性の評価を行い,環境耐久性向上に対する粒界制御の有効性が確かめられた。一方,新たに解決しなければならない問題点も明らかになってきたので,これらの結果を粒界制御にフィードバックし,焼戻し条件も含めて,より最適な粒界制御条件を再検討する。このような粒界制御条件の再検討は当初計画に予定されていたプロセスである。したがって,本研究課題は研究調書に記載した計画にそって順調に進展している。
H25年度に行った粒界制御材料の特性評価の結果を踏まえ,最適粒界制御条件を再検討する。また,フェライト鋼は低放射化材料として次世代の原子炉材料としても期待されていることを踏まえ,当初計画にはなかったが,粒界制御フェライト鋼のPb-Bi共晶合金による液体金属腐食試験を行う予定である。
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Journal of Materials Science
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