研究課題/領域番号 |
24246125
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
連川 貞弘 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40227484)
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研究分担者 |
柴山 環樹 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10241564)
森園 靖浩 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (70274694)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 粒界工学 / フェライト系耐熱鋼 / ラスマルテンサイト / 液体金属脆化 / 溶接熱影響部 / in-situ EBSD / 高温変形 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,粒界工学に基づいた微細組織制御による超環境耐久性を有するフェライト系耐熱鋼の開発指針の確立を目的としている。平成26年度に得られた主な結果は以下の通りである。 1.粒界制御フェライト系耐熱鋼T91の溶接熱影響部における微細組織変化:赤外線イメージ炉を用いた局所加熱によりHAZ再現熱処理を行い,溶接熱影響部における微細組織変化に及ぼす粒界制御の効果を検討した。type IV破壊が生じるFGHAZ部は局所加熱によりオーステナイト化しているにもかかわらず,粒界非制御材よりも対応粒界頻度が高く,局所加熱前の粒界制御の効果が引き継がれる傾向にあることが見出された。HAZ導入後の高温引張り試験により,高温強度の劣化の程度が粒界非制御材よりも粒界制御材の方が小さいことが確認された。 2.α’/γ相変態挙動のin-situ EBSD観察:溶接熱影響部における微細組織変化を明らかにするためにEBSDその場観察を行った。Ac1温度付近まではラスマルテンサイト構造の変化はほとんど見られなかったが,Ac3温度付近において,主にラスおよびサブブロックの粗大化が急激に起こりサブブロック構造が消失した。さらにγ相の核生成は旧オーステナイト粒界およびブロック境界において優先的に生じることが観察された。粒界制御によりオーステナイト化開始温度が高くなる傾向が見られた。 3.粒界制御フェライト系耐熱鋼T91のPb-Bi液体金属脆化挙動:Pb-Bi共晶合金を用いて粒界制御T91鋼の液体金属腐食試験を行った。液体金属腐食試験後の引張試験より,粒界制御材の方が非制御材に比べて高い断面収縮率を示すことが見出され,液体金属脆化の抑制に粒界制御が有効であることが明らかとなった。 4.量子ビーム照射による表面改質の試み:SUS410鋼を用いて短パルスレーザー照射による粒界近傍における弾性歪みの変化をEBSD-Wilkinson法により測定を行った。レーザー照射により歪みの緩和が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度に実施した粒界制御フェライト系耐熱鋼T91のPb-Bi液体金属腐食試験において,次世代原子力発電用材料として期待されているフェライト系耐熱鋼の液体金属脆化の抑制に粒界制御が有効であることが確かめられた。また,当初計画にそってこれまでの研究成果を粒界制御プロセスにフィードバックし,粒界制御の高度化と粒界制御後の焼戻し条件の最適化を実施しており,現在も継続実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本研究課題の最終年度となるため,これまでの研究で得られた成果をまとめ,国際論文誌に公表する。また,当初計画にしたがって平成26年度後半よりこれまでの研究結果を粒界制御プロセスにフィードバックし粒界制御方法の高度化を行っており,当初目的の,フェライト系耐熱鋼の超環境耐久性発現のための粒界制御に関する指針を確立する予定である。
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