研究課題/領域番号 |
24246126
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20201642)
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研究分担者 |
郡司 天博 東京理科大学, 理工学部, 教授 (20256663)
伊藤 賢志 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究室長 (90371020)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分離膜 / 分子ふるい / ハイブリッド / シリカ / ゾルゲル法 |
研究概要 |
シリコン系アルコキシドを出発原料として超薄膜アモルファスシリカ膜を創製し,シリカネットワークの間隙サイズを分子選択透過性の分離原理とするMolecular-Net Sieving Technologyを提案・実証する。以下の3つの研究項目について,ほぼ計画通り研究を進めた。 ①構造化アルコキシドの合成:構造化アルコキシドとして,ポリヘドラルオクタシルセスキオキサン(POSS)重合体を合成した。ヒドリドを有するPOSSの脱水素反応に引き続いてジメチルアリルアミンとヒドロシリル化することにより,ジメチルアミノ基を側鎖とするPOSS重合体を得た。また,ジメチルシリル基を有するPOSSの重合によりテトラメチルジフェニルトリシロキサンをスペーサーとするPOSS重合体を得た。 ②Molecular-Net Sieving材料の特性評価とスクリーニング:(EtO)3≡Si-R-Si≡(OEt)3として,アレキレン基R=CH2(BTESM),C2H4(BTESE),C6H12(BTESH),C8H16(BTESO),フェニル基C6H6(BTESB)を用いて,ゾルおよび粉末を調製し,ゾル粒径および窒素吸着などの特性評価を行った。ケイ酸エチルとヘキサメチルジシロキサンを用いて有機シリカ複合薄膜をプラズマ化学気相堆積法により作製し、低速陽電子消滅法(PALS)でナノスケール構造を調べ、組成及び熱処理により細孔サイズが制御できることを明らかにした。 ③Molecular-Net Sieving膜の開発と特性評価:BTESM,BTESE,BTESH,BTESO,BTESBについて製膜を行い,C数が増えるほど,He/N2選択性および気体透過の活性化エネルギーがポリエチレンに漸近する傾向を明らかとした。さらに,BTESE膜のPALS細孔測定を行い,HCl処理の有効性を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究の進捗状況はおおむね順調であり,当初の計画はほぼ達成した。 ①本年度の目標に従い,ヒドリド基を有するPOSSの重合とヒドロシリル化により新しい構造化アルコキシドが合成できたこと,また,ジメチルシリル基を有するPOSSの重合により簡便な方法でシロキサン構造をスペーサーとするPOSS重合体が合成できたことによる。 ②本年度の目標に従い、異なる構造を有する有機シリカ複合薄膜を作製するためにプラズマ重合と熱処理温度の各条件の最適化ができたこと、また、薄膜中の細孔サイズを計測するための低速陽電子ビーム照射条件を見いだしたことによる。 ③Molecular-Net Sieving膜の開発に関しては,BTESM,BTESE,BTESH,BTESO,BTESBについて製膜を行い,それぞれの特徴的な透過特性を示すことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は当初の予定通り研究は順調に進展した。2013年度はさらに多様な膜材料を用いること,および製膜プロセスの最適化を行いMolecular-Net-Sieving膜の開発を進める。とくに研究分担者との連携を強めることが重要であると考えており,東京理科大で構造化アルコキシドの製膜・特性評価を広島大で行い,さらに産総研で微細構造を評価する。この結果をアルコキシドの創製,製膜の最適化につなげて行く。 ①では,ヒドリド基を有するPOSSの重合体はアミノ基の導入が難しいので,安定に化合物を合成する条件を確立する必要がある。また,ジメチルシリル基を有するPOSSの重合体の合成においても,最適な条件を探索する必要がある。 ②では,低速陽電子ビームの生成条件に合わせた標準多孔質薄膜を作製することにより信頼性の高い細孔サイズ解析技術の確立をめざすとともに、高感度吸着法など他手法を応用することにより、開放細孔や貫通細孔の解析も試みる。 ③では,ゾルの調製条件をBTESEを中心として詳細に検討する。特に,ゾル調製条件では水モル比,撹拌条件に着目しゾルを調製し,さらにゾルの後処理(遠心分離など)を行い,膜透過特性への影響を明らかとする。さらに焼成条件についても検討する。
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