研究実績の概要 |
シリコン系アルコキシドを出発原料として,シリカネットワークの間隙サイズを分子選択透過性の分離原理とするMolecular-Net Sieving Technologyを提案・実証することを研究目的とした。以下の3つの研究項目について,ほぼ計画通り研究を進めた。 ①構造化アルコキシドの合成:構造化アルコキシドとして,ポリヘドラルオクタシルセスキオキサン(POSS)重合体を合成した。ヒドリドを有するPOSSとジフェニルアミンを反応してジフェニルアミノ基を側鎖とするPOSSを得た。この化合物は加水分解性が高く,不活性雰囲気で迅速に操作を行うことにより,ジフェニルアミノ基の導入に成功した。 ②Molecular-Net Sieving材料の特性評価:フロー型蒸気吸着分光エリプソメトリー(フローEP)によりシリカ膜の表面積と細孔分布解析を行うとともに、大気低速PALSを活用して、気体吸着時の平均細孔サイズの解析を試み、閉鎖細孔と開放細孔の各構造状態を評価するための手法を開発した。 ③Molecular-Net Sieving膜の開発と特性評価:製膜用シリコン前駆体としてSi-R-Si構造を有する架橋型アルコキシシランを用いた。架橋基Rにかかわらず,C数が増えるほど,He/N2選択性および気体透過の活性化エネルギーがポリエチレンに漸近し,架橋基がC1 (BTESM), C2 (BTESE) のオルガノシリカ膜では, シリカ成分が支配的な多孔膜的な透過特性を示すが, 有機架橋基の炭素数が増加すると, 架橋基の有機基成分が支配的な膜透過特性に遷移することが明らかとなった。製膜プロセスとしては,ゾル調製の水モル比および焼成雰囲気(空気,窒素)について検討を行った。さらに,spin-spray coating法を開発し,製膜性の向上及び自動化,大面積コーティングの可能性が明らかとなった。
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