研究実績の概要 |
本年度の研究目的は,「水を電子源とした二酸化炭素の還元反応に活性を示す新規光触媒の開発」である。具体的には,Ag,Cu,Ga,In,Zn等からなる硫化物やTa,Nb,Ti等を構成元素とする酸化物に着目し,新規な光触媒材料および反応システムの開発に注力した。その成果として,犠牲試薬を含む水溶液における二酸化炭素の還元反応に活性を示す可視光応答性金属硫化物光触媒を見いだすことに成功した。それらのなかで,CuGaS2光触媒がCO生成反応,NiをドープしたZnSがHCOOH生成反応に活性な光触媒であることを見いだした。このような成果の応用展開として,二酸化炭素還元用光触媒として金属硫化物光触媒,水の酸化用光触媒として金属酸化物光触媒および適切な電子伝達剤を用いたZスキーム型二酸化炭素還元反応を検討した。さまざまな組み合わせを検討した結果, CuGaS2光触媒,TiO2光触媒および還元型酸化グラフェンを用いたZスキームシステムが,紫外光照射下における水を電子源とした二酸化炭素の還元反応に活性を示すことを見いだした。13CO2を用いた同位体実験を行い,本ZスキームシステムがCO2を固定化できている科学的証拠を得た。また,CuGaS2光触媒への貴金属助触媒担持が,その光触媒活性の安定化に有効であることを見いだした。 このように,水中における二酸化炭素の還元反応に活性な金属硫化物光触媒を見いだした。さらに,水を電子源とした二酸化炭素の還元反応に活性なZスキームシステムの構築に成功した。
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