研究課題/領域番号 |
24246151
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 晃 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80241545)
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研究分担者 |
野上 修平 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00431528)
佐藤 裕樹 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20211948)
徳永 和俊 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (40227583)
長坂 琢也 核融合科学研究所, 核融合システム研究系, 准教授 (40311203)
栗下 裕明 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50112298)
谷川 博康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究主幹 (50354668)
藪内 聖皓 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70633460)
波多野 雄治 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 教授 (80218487)
實川 資朗 福島工業高等専門学校, 機械・電機システム工学専攻, 教授 (80354835)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核融合炉 / プラズマ対向機器材料 / 高融点金属材料 |
研究概要 |
本研究では、中性子照射したタングステンの構造材料として求められる照射脆化および再結晶脆化に対する抵抗性について、材料作製時に導入される層状組織や加工組織、さらに超微細結晶粒などの組織制御の効果や、レニウムなどの合金元素を添加する効果の有効性とその適用範囲を明かにし、さらに中性子照射に起因する劣化の起こり難い材料を作製することを目的としている。そのために、平成24年度においては、これまでの成果を基に粉末焼結法を用いて、数種類のタングステン合金を作製し、強度試験用の引張り試験片や曲げおよび熱伝導率評価が可能な試験片の作製を進め、純タングステンにおける加工時に導入された弾性ひずみや、熱応力の緩和の挙動を曲げ応力緩和試験法を使って調べ、そのひずみ回復挙動を明かにし、学会で発表し、論文とした。 25年度においては、作成した合金における組織微細化により引き延ばされた結晶粒組織に起因する機械特性の異方性や、強度の試験温度依存性、および変形挙動の歪み速度依存性について調査した。その結果、Kドープなどにより結晶粒微細化を図った材料では引張り試験による延性脆性遷移温度が、通常の純Wにくらべて約100℃低下すること、そのために一部の材料では室温付近でも塑性変形が現れなど低温側での特性の改善が見られることを明らかにした。また組織異方性では圧延で生ずる層状組織により圧延方向には強度も伸びも向上するものの、板厚方向に強度の低下が現れること、この挙動は結晶粒微細化によっても多少は改善するものの、脆性領域の試験温度では、強度も伸びも引張り方向の数分の一にまで低下することが明かになった。またKドープにより結晶粒を微細化した材料では、Reの3%程度の添加で高温の強度や伸びが大きくなること、また再結晶も純Wに比べて起こりにくくなることなど高温領域での特性改善が見られることが明かとなった。 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに計画していた合金試料はほぼ作成が終わった。また、機械的特性についても基本的な挙動が分かる試験データはほぼ得ることが出来、非照射の状態における微細組織安定性や基本的な強度特性を得ることができた。これらについては学会発表とともに論文にまとめ出版された。また25年度では実験方法を工夫して、圧延材特有の層状組織における層間強度を測定するための試験片および試験治具を作成し合金間における板厚方向の強度が得られたことと、熱伝導率などの高熱流束機器材料に必要な熱特性とその組織異方性についてもデータを得ることが出来た。これらの成果は今後の試験片作製と、高熱流束機器における熱歪みによる変形と破壊挙動を有限要素法によって予測することを可能にするものであり、予定した以上の進捗を示すものである。 また、原子炉照射用の微小引張り試験片を用いて最高1300℃までの引張り試験と疲労試験が可能な試験装置を製作し、この装置と既存の装置を使って、室温から1500℃までの温度領域における純Wおよび一部の微細組織制御した合金の強度の温度依存性も得ることができたことは、26年度以降で計画している高温領域での新合金などの強度特性と組織安定性を調べることを可能にするものであり、今後のための準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度以降に計画している原子炉を用いた中性子照射実験に向けた試験片の作成を進めて行く。また、中性子による重照射領域における組織安定性評価のために、加速器を使った重イオン照射を開始し、これまでの1.5dpaまでの中性子照射データとの比較を行って、低照射量領域における中性子・重イオン照射相関則を明らかにするとともに、核融合炉で想定される15~30dpaまでの高照射量領域の照射挙動を重イオン照射によって調べていく。これまでに作製したタングステン合金から各種の微小引張り試験片を作製し、1300℃までの温度条件下における引張り強さや疲労き裂発生の挙動と、耐照射性特性を持たせるために導入した粉末焼結合金の組織異方性の高温強度への影響について評価を進め、高温強度や破壊挙動に及ぼす耐照射性合金開発の試みの結果を明かにする。
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