研究課題/領域番号 |
24246153
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
深田 智 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (50117230)
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研究分担者 |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90380708)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核融合炉 / ブランケット / トリチウム / 熱 / 回収 |
研究概要 |
本研究は、核融合炉心で生じるDT反応とそれを取り囲む液体ブランケット内で生じるLi-n反応で生じる熱の高効率回収と、新たにトリチウム燃料を製造し効果的かつ安全に回収し、核融合炉を定常に維持する基盤技術の確立を目指したものであり、将来達成される核融合炉工学技術の基礎をなすものである.定常トリチウム自己充足運転時1.5MCi/dayのT発生量を、現在放射線安全と見なされる10Ci/day以下まで閉じ込めるには1/150000の低減率、従って回収率もそれと同程度が必要である.同時に効率的熱回収のためには、高温で速やかに熱から電力への転換をする必要がある。この矛盾する熱とトリチウム同時回収技術の達成のため、研究代表者はこれまで核融合炉トリチウムの拡散移行、吸着脱離、回収等の分野で未知現象を解明し、新規方法を提案実験し、多くの研究成果を挙げ、国際学会誌に成果を発表して来た.今回は、熱交換器壁を通過するトリチウム透過率と熱通過率の同時評価と熱回収率向上を目指すとともに、新規トリチウム回収装置の開発を通して、核融合炉早期実現を目指すものである。 特にITER実験炉建設が進む中、将来の核融合商業炉で使用可能性が高い液体LiPb増殖あるいはFlibeブランケットのトリチウム挙動と回収、環境へのトリチウム漏洩の評価等、実際の運転時に重要と考えられる事象を解明し、核融合炉安全性と経済性向上をめざし、その実現に向かって進むものである.研究代表者らは成果を国際学会で発表するとともに学術誌に発表してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科研費研究の初年度にLiPb液体ブランケット熱流動装置を九州大学実験室内に制作完成させ、自然対流下の水素同位体と熱の同時移行挙動解明の実験をおこなった.その結果、自然対流下で熱と重水素が同時に透過する場合の異常漏洩率を観察し、これが表面近くで滞留する重水素の効果である事を確かめた.さらに広い範囲のパラメーター領域で実験し、透過率と流動条件との間の相関を得た.研究初年度の結果を米国原子力学会で招待講演をする他、関連成果を多くの国際学会で発表し、かつ査読付き英文論文として報告した. 同様に液体リチウム強制流動ループの設計製作を進め、強制流動下で、ごく低濃度のリチウム中の水素同位体を固体イットリウムに吸収し回収する事に世界で初めて成功した.この濃度はブランケット運転濃度条件の1ppm程度であり、核融合炉リチウムブランケットにおける水素同位体回収の道筋をたてる事に成功した.成果を同様に英語論文に発表した. 初年度の結果をFusion Engineering and Design等の国際論文誌に発表するとともに、研究代表者と研究室に所属する大学院生らが、国際ワークショップ等で複数回発表し、世界の核融合炉工学者と議論をし、現象の解明と成果の公表をおこなう事ができた。これらの若い大学院生の国際学会における発表は教育的効果としても重要と思われる。 次年度は、さらにLiPb強制対流条件で実験し広い範囲で実験解析を進めたい.さらに溶融塩Flibeを使った実験を始め、成果を公表したい.
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今後の研究の推進方策 |
液体ブランケット材として、研究初年度にはLiPb共融合金の自然対流状態で研究を進め、予期せぬ高い水素同位体透過率を見いだし、またそれを透過上流側と下流側で異なった温度状態と異なった化学ポテンシャル状態にある事が原因である事を定量的に明らかにし、成果を国際学会誌に発表するとともに、米国原子力学会で招待講演され成果を発表する事が出来た.研究の主目的である核融合炉ブランケットから熱とトリチウムを同時に高回収率で回収するには、新規装置設計制作が今後必要であると感じた. 研究の次年度には、そのために強制向流状態のLiPb流とHe流状態を実験室内で実現し、トリチウムの高い回収率を連続的に実現させることを目指して実験を成功させたいと考えている.この考え方は、化学装置では過去に有るが、液体金属流と不活性ガス流状態ではなく、初めての実験的試みである.成果が期待される. さらに将来のヘリカル型核融合商業炉でFlibe溶融塩を使ったブランケットが着目され、最近成果が見直されてきているが、本研究者らは液体Flibeブランケット流動装置をあらたに九州大学内に製作し、熱とトリチウムの同時回収のための装置を製作し、回収実現を明らかにしたいと思っている.溶融塩は高温でも非常に安定で、空気や酸素との反応性が全くないので、事故時においてもトリチウムの予期せぬ漏洩が防げる可能性がある.また高いトリチウム回収率も過去の我々の実験で期待されるので、本科研費で連続回収実験が成功すれば、将来の商業炉でも取り入れられる可能性が高いと思われる.今後は、液体増殖ブランケット建設実現に向けて、実際状態に極めて近い条件で、熱とトリチウム回収の実現をおこないたい.
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