研究課題/領域番号 |
24246161
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大屋 裕二 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (00150524)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ソーラータワー / 太陽光発電 / 風力発電 / ハイブリッド発電 / 熱上昇流 / 集風構造体 |
研究概要 |
・従来のソーラータワーと称する自然エネルギー利用装置は次のようなものである。地上に集熱部となる上面を閉じた大規模空間を設置し、その中央に円筒状のタワーを設ける。この大規模空間内において太陽光で暖められた空気は、中央に設置したタワー内に収束し上昇気流となる。その上昇気流中に風力タービンを設置し、発電しようとするものである。この従来技術の問題点は以下の二つにある。 1)タワーが円筒状なので暖められた空気の集風性が非効率である。2)太陽光を利用するので夜間は上昇気流が得られない。本研究は、レンズ風車の発明をベースにさらに新しく、風がなくても風力発電ができるとした発想でウインドソーラータワーと称する自然エネルギー機器を提案するものである。新規形状、特徴としては、1)従来のソーラータワーのタワー形状を上空に向かうディフューザ型に新しくデザインしたものである。2)タワー上部に低圧発生装置を設け、太陽光が得られない夜間は、上空風を利用して低圧部をタワー出口に設け、上昇流を作って発電する、いわば垂直構造型風レンズである。 本年度は、タワー根元直径32cm、タワー高さ2.0m、2mx2mの集光部を設け、室内モデル実験を行った、太陽熱による熱供給の代わりに、ヒーターマットを集熱部下部においた。得られた結果を示す。 1)タワーをディフューザタイプ(上空拡がり)にすると約1.5倍上昇風速が速くなった。2)発電用ブレードを設置しても、従来の円筒チムニーに比べ、上記のディフューザチムニーは約1.5の増速を得た。3)増速性能に対応して、発電量の2-3倍の増加(円筒チムニーとディフューザチムニー)が得られた。4)集熱部内の平均温度と上空温度の差を大きくすると、上昇スピードが増加する傾向が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の予定は、室内実験として可能な高さの2mのソーラータワーおよび集熱部として4m四方のモデルで実験を行った。内容は実績報告書に示している通りだが、熱上昇風の生成とその風量による発電が可能であることが確認できた。また、タワーの形状との発電量増加も示した。具体的には従来の円筒型のタワーより、上方拡大型のディユーザ型のタワーの方が約1.5倍大きい増速効果をもたらすことが分かった。同時に風車プロペラをタワー下部においても(風車プロペラは抵抗体となる)、その増速効果は変わらず、従来のソーラータワーに比べ、数倍の発電量を示せる事ができた。並行してソーラータワーの熱上昇風を実現するためにCFD(数値流体解析)の準備を進めた。従来の直円筒タワーとディフューザ型タワーの上昇風速度の違いをCFDでも検証するために、計算プログラムと短形格子近似法による格子生成を検討した。また、この計算コードを用いて温度差によってどれだけ熱上昇風が増速するかも検討できる。従って初年度(24年度)は予定通り進んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の続きの実験を行う。熱上昇風の速度計測の精度を高めるために本研究室で開発した速度・温度同時計測プローブとその校正装置を用いて定量的に計測する。同時に流れを可視化してPIV法でも速度計測を行う。これらによって熱上昇風計測の精度を確かめる。同時に上述したCFDの計算を開始し、室内実験と数値計算結果の相補的な検討を行う。 次に平成25年度の研究予定である上空風の吸い込みよる発電に取り組める。これで昼夜の発電が可能な世界で初めてのウインドソーラータワーの原型ができる。このときに、上空風の吸い込みでタワー内に上昇風を強く生成するためにタワー上部出口に低圧発生装置を設けるが、様々なアイデアを試す予定である。平成26年度は上記の装置を装備した高さ20m程度のタワーと120m範囲ほどの集熱部を建設して野外実験を行う予定である。
|