研究課題/領域番号 |
24247010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 孝行 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80197152)
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研究分担者 |
荻原 克益 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00422006)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 排卵 / メダカ / 内分泌制御 |
研究実績の概要 |
(1)LHによるnPR(転写因子)の発現誘導機構:メダカ排卵は、他の脊椎動物と同様、LHサージにより誘導される。これまでの研究から、LHサージ後の顆粒膜細胞において細胞内cAMP上昇、Epac/Rap系の活性化、PI3キナーゼ/AKTの活性化、転写因子nPRの発現という一連の反応が起こることが示された。平成26年度では、このカスケード反応についてより詳細に検討することとした。その結果、PI3キナーゼとAKTの活性化により、転写因子CREBのリン酸化が起こることを見出した。
(2)nPR(転写因子)のよるMT2-MMP(排卵酵素)及びEP4b(PGE2受容体)の発現誘導機構:これまでの研究によって、顆粒膜細胞において発現するnPRが、その後のMT2-MMP及びEP4bの発現に必須であることを示した。当該年度では、EP4b遺伝子の発現に、nPRのみならず、mPRalpha(膜型プロゲスチン受容体)が関わることを示した。また、次世代シークエンス解析により、MT2-MMP遺伝子の発現に他の転写因子AP-1が関与することを見出した。
(3)MT2-MMP とEP4bの発現に必須の卵由来因子の探索・同定・作用機構:排卵予定の濾胞の顆粒膜細胞に発現する排卵関連遺伝子は、卵細胞由来の因子により影響を受けているとの仮説を検証するため、卵-顆粒膜細胞の間にあるギャップ結合の作用を阻害する化合物の効果を調べた。その結果、排卵前12~7時間に、卵から顆粒膜細胞に供給される因子の存在が示唆された。実際、ギャップ結合阻害剤により排卵酵素MT2-MMP mRNAの発現が強く阻害されることを見出した。ギャップ結合を通過する低分子化合物(分子量<1,000))の正体を明らかにする試みも始めたが、成果は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、4年間の研究期間内に以下の(1)~(3)の課題解決を目指している。 (1)LHによるnPR(転写因子)の発現誘導機構、(2)nPR(転写因子)のよるMT2-MMP(排卵酵素)及びEP4b(PGE2受容体)の発現誘導機構、(3)MT2-MMP とEP4bの発現に必須の卵由来因子の探索・同定・作用機構 4年間の研究期間のうち3年間が終了した段階で、(1)と(2)の課題に関しては当初の計画通りに進んでいると考えている。一方、(3)については条件検討の難しさから、当初予定の計画からは少し遅れている。他方、脊椎動物全般の排卵メカニズムの理解のため、世界に当該分野の研究者と研究の進展と現状について意見交換するという目標も本研究では掲げている。当該年度では、zebrafishの生殖の研究を世界レベルでリードしているカナダの研究者と魚類の排卵に関する未解明課題について意見交換した。以上の結果を踏まえて、当年度の総括として②おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
項目10において記載したように、総じて研究の進展状況は順調である。上述の(1)と(2)の課題については、研究計画を当初の予定通りに進める。(3)の課題に関しては、次世代シークエンス解析を導入することによって困難を打開する予定である。
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