1. LHによるnPR(転写因子)の発現誘導機構:メダカ排卵はLHサージにより誘導される。これまでの研究から、LHサージ後の顆粒膜細胞において細胞内cAMP上昇、Epac/Rap系活性化、PI3キナーゼ/AKTの活性化、CREBのリン酸化、転写因子nPR発現の反応が起こることが示された。当該年度は、このカスケード反応の他に、Rafの関与について検討した。その結果、RafがnPRの発現に関与することを示唆する知見が得られた。しかし、上記の主たるカスケードの構成因子ではなく、別の経路の構成単位として機能していることが明らかになった。 2. nPR(転写因子)のよるMT2-MMP(排卵酵素)及びEP4b(PGE2受容体)の発現誘導機構:顆粒膜細胞において発現するnPRが、その後のMT2-MMP及びEP4bの発現に必須であること、さらに、nPRの下流において他の転写因子数種が関わることが知られている。当該年度では、MT2-MMP遺伝子の発現に焦点を当てて詳細に検討した結果、2種類の転写因子c/EBPb及びAP-1(Fosl-1aとc-Junが相互作用した機能因子)が関与することを見出した。 3. MT2-MMP とEP4bの発現に必須の卵由来因子の探索・同定・作用機構:排卵実行遺伝子のひとつであるMT2-MMP遺伝子の発現が、ギャップ結合阻害物質カルベノキソロンにより強く阻害される。これは、卵-顆粒膜細胞の間にあるギャップ結合の閉塞がMT2-MMP遺伝子の発現を抑制するという仮説を支持する。本年度においては、排卵濾胞のカルベノキソロン処理がMT2-MMP遺伝子発現の抑制をもたらす現象の背景にあるメカニズムを探るため、排卵濾胞に発現するギャップ結合構成タンパク質コネキシについて解析した。次世代シークエンス遺伝子発現解析の結果、5種類のコネキシ遺伝子が発現していることを見出した。
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