研究課題
生殖系列の性決定機構はいまだ解明されていない。私たちは、ショウジョウバエの生殖系列において、Sxlと呼ばれるRNA結合タンパク質が、細胞自律的に働きメス化を誘導することを明らかにした。前年度までに、GFPを融合したSxlを生殖系列で発現させ、RIP解析により、その融合タンパク質と結合するRNAを同定した。さらに、そこから、生殖系列の時系列トランスクリプトームデータをもとに生殖系列で発現するRNAを119種類同定した。本年度はこれら遺伝子(RNA) の機能阻害実験を行い、Sxl下流候補遺伝子(RNA)を絞り込むことを試みた。これらRNAに対するdsRNAを生殖系列で発現させそれぞれの機能阻害を行った。まず、Sxlの機能を初期PGCにおいて阻害すると、メス化が不完全となり卵巣中で腫瘍化することが知られている。同様に、上記のように同定した119種類の遺伝子のうち遺伝子A(仮称)の機能阻害を行うとSxlの機能阻害と同様の表現型を生じた。このことは、この遺伝子がSxlの下流で働くことを強く示唆する。そのほか、Sxlの下流で働く候補遺伝子としてNHP2も同定した。ヒドラを用いた研究に関しては、ヒドラから多能性幹細胞、雄性生殖幹細胞、雌性生殖幹細胞をセルソーターを用いて単離することに成功しており、現在RNAseqを行っている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、Sxl下流候補遺伝子を同定することに成功した。今後これらの詳細な機能解析や発現解析などにより、Sxlの関わる遺伝子経路を明らかにすることができる。さらに、ヒドラにおいて、多能性幹細胞と生殖幹細胞の相違や雌雄差を生み出す遺伝子を同定し、ショウジョウバエと比較することにより、雌雄差を生み出す普遍的なメカニズムを明らかにすることができると予想される。
今後は、Sxl下流候補遺伝子の機能解析や発現解析を進め、Sxlの関わる遺伝子経路を特定する。また、ヒドラにおいて多能性幹細胞や雌性/雄性生殖幹細胞を特徴付ける遺伝子発現を明らかにするとともに、ショウジョウバエとの共通性を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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