研究概要 |
マメ科のモデル植物であるミヤコグサLotus japonicusは、日本で沖縄県宮古島から北海道最北部にまで、緯度にして20度を超える範囲にわたっており、産地毎に開花時期がずれていることによって、交配する機会を失った「種内分化」が進行していることがこれまでに示唆されている。植物が開花する過程には3つのステップがあり(光受容体系、概日時計系、花芽形成系)、それぞれに複数の遺伝子が関与していることが知られている。本年度は、日本国内の北海道から宮古島までの10地点に由来するミヤコグサを用いて、光受容体遺伝子群PhytochromeA, B, E, ならびにCryptochrome1と2, 概日時計遺伝子E1の塩基配列を合計15,121bpにわたって解析した。その結果、PHYAで塩基置換6(エキソン/イントロン:5/1), PHYBでは6(4/2)、PHYEでは3(3/0)が見つかった。E1では5塩基置換すべてが非同義置換であった。非同義的置換をPHYの翻訳領域にマップした結果、大部分が光受容体機能を担当しているN-末端側の領域に位置した。一方、CRY1とCRY2では塩基置換が0であった。以上のことから、ミヤコグサのPHY遺伝子、及びE1は、自然集団でStanding Genetic Variationとして遺伝子多型が維持されてきたと考えられる。それに対してCRYは変異を抑制する浄化選択が作用していることが示唆された。また、これまでミヤコグサで存在とゲノム上の位置が不明であった概日時計遺伝子:GIGANTEAについて、ゲノム上の位置が第5染色体上の(非公開)にあることを明らかにした。今後はE1を含めた花成関与遺伝子の発現量を早咲き(南)-遅咲き(北)間で比較解析する予定である。
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