研究課題/領域番号 |
24247014
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深井 周也 東京大学, 放射光連携研究機構, 准教授 (10361792)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 分子認識 / DNA修復 / タンパク質複合体 / ユビキチン / X線結晶構造解析 / 構造生物学 |
研究概要 |
ユビキチンは,タンパク質分解をはじめとする多様な細胞機能を制御するシグナル分子としての役割を担うが,複数のユビキチン分子が数珠つなぎになったポリユビキチン鎖として機能する例が多く知られる.本研究では,DNAの損傷応答を制御するK63結合型ユビキチン鎖の合成・分解・認識に重要なタンパク質複合体(OTUB1-Ubc13-Mms2伸長抑制複合体, BRCC36脱ユビキチン化酵素複合体とユビキチン鎖との複合体,RNF168のUMIドメインとユビキチン鎖との複合体など)の立体構造を決定し,構造情報に基づいて設計した変異体の機能解析をin vitroおよびin vivoで行うことによって,K63結合型ユビキチン鎖を介したDSB応答のメカニズムを原子の解像度で明らかにすることを目的とする.今年度は,昨年度決定したRNF168-UMIとユビキチンとの複合体に基づいて,変異体の相互作用解析を行うことで,新たなユビキチン認識メカニズムを機能と構造の両面から明らかにした.また,DNA損傷応答に関わる新規のユビキチン結合タンパク質であるFAAP20のZnフィンガードメインとユビキチンの相互作用についても,昨年度決定した複合体の結晶構造に加えて,変異体の相互作用解析や損傷時の細胞内での局在観察を行い,機能構造相関を明らかにした.BRCC36脱ユビキチン化酵素複合体については,4つのサブユニットを共発現させることで,結晶化に十分と期待される質と量の試料を調製する方法を確立した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した3つの複合体(OTUB1-Ubc13-Mms2伸長抑制複合体, BRCC36脱ユビキチン化酵素複合体とユビキチン鎖との複合体,RNF168のUMIドメインとユビキチン鎖との複合体)のうち,OTUB1-Ubc13-Mms2伸長抑制複合体とRNF168のUMIドメインとユビキチンとの複合体の構造決定を終えている.OTUB1-Ubc13-Mms2伸長抑制複合体については,機能構造相関を明らかにした成果を論文として発表しており,RNF168のUMIドメインとユビキチン鎖との複合体については,変異体の相互作用解析を終えて,論文の執筆を開始している.BRCC36脱ユビキチン化酵素複合体については,構造解析に適する試料調製方法を確立し,結晶化に向けて大きく前進した.また,DNA損傷応答に関わる新規のユビキチン結合タンパク質であるFAAP20のZnフィンガードメインとユビキチンとの複合体についても,変異体の機能解析により機能構造相関を明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画の内,2つの複合体について解析を終え,残る複合体はBRCC36脱ユビキチン化酵素複合体のみとなった.BRCC36複合体については,全体の分子量が160 kDaの真核生物由来の複合体であることから,大量調製が一つの大きな壁であったが,研究の進展により,結晶化が期待される質と量の複合体を調製することが可能になった.今後は,不安定な領域のトリミングや構造解析に最適な生物種の検討などの工夫を行うことで,ユビキチン鎖との複合体の結晶化に向けて研究を進める.
|