研究課題
細胞は基質や隣接細胞の硬さを感知し、それに応じて増殖、分化、生存、運動を制御して自身の運命や行動を決定することが最近明らかになってきた。しかし、その感知機構は未だ不明である。我々は、細胞が基質の硬さを調べる際は、接着斑を介して接着した基質を能動的にアクチンストレス線維により引っ張り、接着斑/細胞骨格において硬さを反映する応力を細胞内シグナル(Ca2+スパーク)に変換して基質の硬さを感知していると考えている。本研究では、その「アクティブタッチ」仮説の検証とその分子機構を明らかにすることを目標としている。これまでに、血管内皮細胞において、アクティブタッチに関連する細胞内Ca2+上昇と基質硬度依存的な細胞伸展には、MS(機械刺激受容)チャネル、特にTRPM7が、関与していることを明らかにしてきた。加えて、間葉系幹細胞においてはTRPV4が接着斑構成分子と相互作用し、基質硬度依存的なCa2+スパークに関与していることを明らかにしてきた。間葉系細胞ではYAP/TAZ分子の活性が基質硬度依存的に制御されて細胞分化につながることが報告されている。今年度は、YAP/TAZ分子の活性を指標に、基質依存的なCa2+シグナルがどのような生理的な意義を持つか検討した。間葉系幹細胞のTRPV4あるいはTRPM7発現を抑制したところ、YAP/TAZ分子の核移行、すなわち、活性が抑えられた。TRPV4を発現抑制した細胞においてより顕著にYAP/TAZ活性が低下していたことから、間葉系幹細胞においてはTRPV4を介したCa2+シグナルが、基質硬度依存的な細胞分化を制御する主要な経路として機能している可能性が示唆された。また、近年、MSチャネルとして注目されているPIEZOチャネルが間葉系幹細胞の基質硬度感知に寄与しているか、RNAi法による発現抑制により評価したが本実験系では影響は見られなかった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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