酵母の浸透圧センサーSho1は4個の膜貫通(TM)領域を持つ。前年度までに、Site-directed Cysクロスリンク法を用い、Sho1がTM1/TM4接合面により二量体化しTM2/TM3接合面により三量体化すること、それらの接合の繰り返しによって多量体を構成することを明らかにした。また、浸透圧刺激によってSho1分子の構造が変化することにより、Sho1の細胞質領域とアダプタータンパク質Ste50との結合が誘起された。この反応がSho1による浸透圧シグナル経路活性化の中心的な機構だと考えられる。 本年度はSho1浸透圧センサーの作用機構についてさらに詳しく検討した。膜の構造とイオン透過性に大きな影響を与える抗真菌剤Nystatinが、浸透圧そのものにはほとんど影響のない濃度でもSho1浸透圧センサーを活性化することから、Sho1浸透圧センサーが膜の構造変化、特に膨圧変化に応答するという結論を得た。 酵母では、Sho1の他に、一回膜貫通型タンパク質Msb2とHkr1も浸透圧センサーとして働くことがわかっている。本年度はMsb2がいかにして浸透圧変化を検出するかを検討した。浸透圧によるHog1活性化には、膜アンカータンパク質Opy2とMsb2との結合が必須であり、この結合にはOpy2の細胞外領域Cysteine rich (CR)領域が関与している。変異体の生化学的解析の結果、CR領域の8個のシステインが4組のジスルフィド結合により規則的な2次構造をとることがわかった。また、この構造とMsb2のHMHドメインとの特異的結合が高浸透圧ストレスにより変化をうけることなどが明らかになった。したがって、Opy2-Msb2複合体が浸透圧検出機能を持つと考えられる。 今後の課題としては、二種類の浸透圧センサー(Sho1とMsb2)の機能分担や相互作用などを解明する必要があろう。
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