研究課題
潜在的幹細胞の性質を持つNgn3陽性細胞、定常状態幹細胞として機能するGFRα1陽性細胞、幹細胞能の大部分を失ったKit陽性細胞をそれぞれマウス精巣より純化した。cDNAマイクロアレイ解析によってこれらの遺伝子発現プロファイルを取得、Ngn3陽性細胞で特異的に発現する遺伝子群を同定した。さらに、これらの細胞のレチノイン酸シグナルに対する応答を個体レベルで解析した。これらの細胞群は、遺伝子発現が少数をのぞいて高程度に類似しているのにも関わらず、レチノイン酸に対しては全く異なる応答を示すことを発見した。この反応性の違いこそ、「潜在的幹細胞」の自己複製能を「潜在化」し、分化方向に偏らせている具体的表現型であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
潜在的幹細胞が真の幹細胞に比べて分化方向に偏っているという証拠は明らかであったが、精巣の組織の中でこの性質の違いが生まれる基盤は不明であった。本年度の研究によって、この性質の違いが分化誘導シグナルレチノイン酸に対する反応性の違いであることが明らかになった。さらに、潜在的幹細胞に特徴的な遺伝子発現プロファイルを明らかにしたことで、この細胞群の成り立ちや性質の解明が一層加速すると期待される。以上の状況から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
本年度の研究によって明らかとなった潜在的幹細胞 (Ngn3陽性細胞) と真の幹細胞 (GFRα1陽性細胞) の、レチノイン酸に対する反応性の違いを産み出す基盤メカニズムを分子レベルで解析する。具体的には、Ngn3陽性細胞に特異的に発現する (GFRα1陽性細胞には発現しない) 遺伝子(群)がこの反応性の違いを担うという仮説を、候補遺伝子(群)をGFRα1陽性細胞に異所的に発現させ、そのレチノイン酸に対する反応性や組織内での運命を追跡することによって検証する。さらに、潜在的幹細胞 (Ngn3陽性細胞) が、真の幹細胞 (GFRα1陽性細胞) から生じるメカニズムの細胞レベルおよび分子レベルでの解析を継続して推進する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (51件) (うち招待講演 27件) 備考 (1件)
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