研究課題
24年度までに解明した潜在的幹細胞(Ngn3陽性精原細胞)に特徴的に発現する遺伝子プロファイルに基づき、細胞外シグナル分子や転写因子など、潜在的幹細胞の形成と機能を担う分子候補を明らかにし、重要なものに関してその発現の特異性を確認した。ついで、培養細胞を用いて、GFRα1陽性細胞をNgn3陽性細胞に転換する細胞外シグナル分子の候補を同定した。また、潜在的幹細胞がレチノイン酸に応答して分化する性質を与える候補分子を同定し、その機能を解析するために真の幹細胞に異所性に発現させるマウスモデルを樹立し、解析を開始した。更に、「真の幹細胞」から「潜在的幹細胞」を生じる精巣組織内の細胞ダイナミクスを解明した(Cell Stem Cell 2014)。
2: おおむね順調に進展している
潜在的幹細胞が真の幹細胞から生まれることは明らかであったが、精巣の組織の中でどのようなダイナミクスで作り出されるのか、また、それを引き起こす分子機構はどのようなものか、いずれも不明であった。本研究によって潜在的幹細胞の生まれるダイナミクスが解明され、また、それを担う候補分子が培養細胞を用いた実験で同定された。更に、潜在的幹細胞を分化に方向付ける分子基盤として、レチノイン酸に対する特徴ある反応性を発見し、それを担う候補分子を解明してきたが、この仮説を個体レベルで検証するためのマウスモデルの作出に成功した。以上のように本研究は、潜在的幹細胞の理解に向けて順調に進展していると判断する。
本年度までに明らかにした潜在的幹細胞を産みだす細胞外シグナルの候補分子の機能を、培養細胞を用いて詳細に解析するとともに、個体組織における候補分子の発現解析や組織における細胞ダイナミクスとの関連を解析する。以上によって、潜在的幹細胞を作り出すメカニズムを分子および細胞のレベルで解明する。さらに、潜在的幹細胞がレチノイン酸に応答して分化する性質を与える分子メカニズムの解明に向けて、本年度までに樹立した候補遺伝子の機能を解析するためのマウスモデルを用いた詳細な解析を行う。以上の研究を加速することで、潜在的幹細胞の理解を押し進める。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (24件) (うち招待講演 10件) 備考 (1件)
Cell Stem Cell
巻: 14 ページ: 658-672
10.1016/j.stem.2014.01.019
Development
巻: 140 ページ: 3565-3576
10.1242/dev.094045
http://www.nibb.ac.jp/germcell/