研究概要 |
平成24年度は, 植物ミトコンドリアゲノム上の破壊目的遺伝子にあわせた人工制限酵素TALENの構築, 並びにミトコンドリア局在/発現誘導型形質転換ベクターの構築を行った. シロイヌナズナとイネにおいて具体的な破壊ターゲット遺伝子内の標的配列を選び, 第一弾として三遺伝子につき計5カ所を破壊する人工制限酵素ペアを設計し, インビトロジェン社にプラスミド構築を発注した. 二つ一組のTALENを同時にエストロゲン薬剤誘導発現し, またミトコンドリアへ局在させる為の形質転換発現プラスミド(植物形質転換タンデム誘導発現ベクター)を構築完成することができた. このプラスミドへは試験的にTALENの代わりにGFPとRFPの二つのORFを同時に挿入し, これをパーティクルボンバードメント法でシロイヌナズナ葉表皮細胞に導入し, 蛍光顕微鏡で観察したところ, 確かに二つのORFがどちらも発現してミトコンドリアへ局在することを確認した. この複雑なベクター構築には, インビトロジェン社のMultisite Gateway Systemを導入しており, 新たなTALENが手に入り次第, すぐに簡単に植物形質転換タンデム誘導発現ベクター内に導入できるようになっており, このようなクローニングが具体的に機能しているところまでチェックが進んでいる. 現在, 11種類のベクター(うち三種はコントロール)が完成し, シロイヌナズナへの形質転換を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年は標的遺伝子と配列の選定, 植物形質転換タンデム誘導発現ベクター構築, クローニング方法の構築, 各種形質転換作業までを計画しており, 計画通り順調に進んでいる. この途上, 検定方法を容易にするために, ターゲット配列の中に制限酵素サイトを挿入するなどの工夫をおこなった. また, 一つの遺伝子について, 二カ所を別々の二つ一組ずつのTALENターゲットにするのではなく, 破壊配列を一カ所に絞り, 二組の認識配列を距離をずらして設計することで, 二組で二種類ではなく, 一カ所を四種類の組み合わせで検討でき, 価格を半分に押さえる工夫をすることができた. 形質転換体がどれくらいとれてくるかが未だ不明な点は不確定要素があるが, 現在のところおおむね予定通り順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に設計した人工制限酵素遺伝子それぞれの植物形質転換タンデム誘導発現ベクターについて,完成した物から順次植物へ形質転換していく.二つ一組のTALENはそれぞれが目的配列の前後に結合し, その間部分のDNA配列を切断し続け, 変異(おそらくは欠失)が起こる. 目的配列としては, 致死にならないような配列部分を選び, なおかつ, その変異を検出できるように, 一般的な制限酵素認識配列を選んでいる. 形質転換植物ができたら, T2植物種子をえてから本格的な解析を行う予定であるが, T1植物世代でも植物の緑葉の一部で薬剤誘導~PCRと制限酵素処理を行って, 遺伝子破壊の有効性を確かめていきたい. 人工制限酵素については, ターゲット配列そのものや, 二つの認識部位の距離などについて, 多数種類を試行錯誤するしかない. そのため, さらにたくさんの人工制限酵素について, 上記複雑なベクターを構築する必要があり, H24年度に開発したMultisite Gatewayシステムを流用して, 効率よくベクター構築する予定である. 昨年度作製した人工制限酵素ベクターについて結果を確認しつつ, 新たな改変人工制限酵素を設計/ベクター作製/形質転換/評価を繰り返していき, ミトコンドリアゲノム改変に挑戦し改良していく. また, これまでは二つ一組の人工制限酵素を用いることで改変を計画してきたが, ミトコンドリアゲノムは核ゲノムと比較してサイズが小さいため, 単一ターゲットを認識するのに比較的短い塩基配列で十分となる. この利点を活かして, 二つ一組のTALENでは無く, 人工制限酵素一個だけにDNA切断酵素を付加したcTALENsについても検討, 挑戦してみたい.
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