研究概要 |
本研究では、O. sativa/O. glumaepatula種間交雑において見出されたF1花粉不稔遺伝子(S遺伝子)S22A、S22B、S23、S27/S28について原因遺伝子/変異を特定し、多様性解析によりS遺伝子の分化と集団遺伝学的効果について解析する。 遺伝子単離については、S22Aを候補領域150kbに絞り込み、候補領域内の最有力候補の遺伝子については形質転換体を作成した。単離済みのS22Bについてウエスタンブロッティングを行ったところ、予測よりも短い断片が検出された。S22Bはミトコンドリア移行型タンパク質である事からプロセシングの結果と考えている。また、S22Bの原因変異を特定するため、日本型イネ台中65号(T65)とO. glumaepatulaのキメラ遺伝子のコンストラクトを作製し、形質転換体の作出に着手した。 AAゲノム種のアフリカ/南アメリカ種群におけるSアリルの分化と多様性について調査する材料育成のため、遺伝研コアコレクションにT65による戻し交雑を進め、O. glumaepatula(南アメリカ), O. barthii(アフリカ)についてはBC1F1, BC2F1種子、O. longistaminata(アフリカ)についてはBC3F1種子を作出した。 副次的な成果として、アフリカの栽培イネO. glaberrimaにて同定されたS1, S19, S20, S21の4遺伝子をT65遺伝的背景に集積した系統を育成した。通常O. glaberrima系統IRGC104038とT65の交雑F1は花粉完全不稔を示すが、集積系統をIRGC104038に交雑したF1は花粉稔性が9.6%まで回復しており、F1花粉不稔緩和の効果があった。この集積系統は生殖的隔離を打破できる系統であることが分かった。
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