研究課題
主要作物イネの遺伝的改良を目標として、次世代シーケンサーによる全ゲノム解析と新技術「QTL-seq法」(Takagi et al. 2013, Plant J. 74:174-183)により、迅速に有用形質を支配する量的遺伝子座(QTL)を単離同定する。さらに、名古屋大学石浦研究室開発の世界最先端の生物発光リアルタイム計測技術とQTL-seq法を併用することにより、耐病性信号伝達系に関与する遺伝子群を網羅的に同定単離することを目指す。平成25年度の研究実績の概要は以下の通り。1) QTL-seq法によるイネ量的遺伝子座の単離同定イネの品種間交雑由来のF2およびRILs(Recombinant Inbred Lines)を材料にして、QTL-seq法を適用することにより、耐冷性QTLの同定、出穂期QTLの同定、低温発芽性QTLの同定、いもち病耐病性QTLの同定を実施し、それぞれ主要なQTLの座上位置決定に成功した。多数のQTLを全ゲノムシーケンスにより迅速に同定してDNAマーカーを開発して育種を迅速化する技術基盤が確立した。2)生物発光リアルタイム計測技術とQTL-seq法の合体生物発光リアルタイム計測は、イネに適した装置が既に完成している。イネ耐病性遺伝子プロモーター下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を結合したコンストラクトにより形質転換したイネ系統を作出した。同様に、シロイヌナズナにおいても形質転換体を作出した。現在、これらの形質転換系統からQTL-seq法利用に適した系統を選抜中である。
2: おおむね順調に進展している
イネの様々な形質に対しQTL-seq法を適用することにより、多数のQTL同定に成功した。さらにこれらのQTL領域にDNAマーカーを設定してマーカー選抜法を実施することにより、実際の育種作業に役立っている。生物発光リアルタイム計測技術とQTL-seq法の合体については、ルシフェラーゼ遺伝子形質転換体作出に時間がかかったため当初予定より研究進捗が遅れているが、最終年度に成果を出すことができるように努力する。
イネへのQTL-seqについては、迅速にQTLの本体遺伝子の単離同定に到る技術開発を進める。生物発光リアルタイム計測技術とQTL-seq法の合体については、ルシフェラーゼ遺伝子形質転換体を材料として、1)シロイヌナズナ、2)イネの優先順位で、耐病性遺伝子誘導に関するQTL同定作業を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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