研究課題/領域番号 |
24248016
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
依田 幸司 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20143406)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 微生物 / 酵母細胞壁 |
研究概要 |
β-1,6-グルカン合成には、小胞体に存在する可溶性タンパク質Kre5と膜タンパク質Keg1、小胞体と細胞質膜をリサイクルするKre6、細胞質で小胞輸送に関与するKre11、細胞膜の外側に局在するGPI-アンカー型のKre1、ペリプラズムに分泌されるKre9が重要な働きをしている 野生型タンパク質を検出する抗体を調製するため、既に抗体取得済みのKre6以外を大腸菌で発現させ、安定に大量調製する構築を多種試みたがいずれも難航した。終盤からは真核細胞の宿主・発現系の使用に計画変更して再検討している。 生化学的機能がまったく不明で分泌タンパク質と予想されているKre9について、N末端の予想シグナル配列の直後とC末端にそれぞれHAタグ標識した細胞を作製した。いずれの細胞もK1キラー毒素感受性ではβ-1,6-グルカンは正常で、標識タンパク質は機能的である。間接蛍光染色でN末端標識体は細胞内ドット状、C末端標識体は主に小胞体様の像として認められた。C末端近傍にゴルジ体のKex2プロテアーゼ認識配列KRの存在に気付き、KAへのアミノ酸置換体およびΔkex2遺伝子破壊株での検討の結果、実際にここで切断プロセシングが起ることを明らかにした。 今後生化学的解析が重要になると予想しているKre5とKre6について、活性測定などで野生株と詳細な比較ができる温度感受性変異株の作製を試みた。Kre5については、先行研究で報告された温度感受性株のアミノ酸置換体を再構築したが温度感受性を示さず、独自にerror-prone PCRで2株を取得し、アミノ酸置換部位を同定した。Kre6は先行研究がないので最初からKre5と同じ方法で、3変異体の取得に成功した。これらは複数のアミノ酸置換を起こしていたが、野生型とのキメラの解析によって、ルーメン側にあるアミノ酸置換のみで温度感受性を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗体調製用の抗原タンパク質の大量生産に成功していないことは残念だが、出来るか出来ないかは実際に実験を行うまで分らず、難易度の低いものから順に検討すべきであるという原則から計画自体の欠陥ではない。 Kre9がゴルジ体でKex2プロテアーゼによりプロセシングされることは先行研究でのKre9が分泌タンパク質であるという報告を覆す重要な発見である。 インビトロβ-1,6-グルカン合成系で野生型タンパク質と比較して解析するための温度感受性変異体の構築については、重要な働きの予想されるKre5と Kre6の両者で成功したことが、初年度の成果として高く評価されるべきことである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで抗原タンパク質の調製に成功していないが、抗体が取得されれば飛躍的な研究の進展が期待できるので、今後も根気強く継続すべきである。 Kre9がゴルジ体でKex2プロテアーゼによりC末端近傍で切断されることが明らかになったので、先行研究での、多コピー発現株で全長に相当する糖鎖付加されたタンパク質が細胞外に分泌されるという報告が、極めて疑わしくなってきた。私たちの間接蛍光染色顕微鏡観察では細胞内にシグナルが認められ、予備的な細胞分画でもゴルジ体に存在している可能性を示唆する結果が得られている。次年度は、これらの点について厳密かつ詳細に解析する必要がある。 温度感受性株の細胞生物学的な検討を十分に進め、Permeabilized cellによる無細胞系の構築への努力検討を着実に進めたい。
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