研究実績の概要 |
未だ具体的な生合成機構が不明なβ-1,6-グルカンは、小胞体(ER)の可溶性タンパク質Kre5と膜タンパク質Keg1、ERと出芽生長領域の細胞質膜にある膜タンパク質Kre6、分泌シグナルを持つが局在部位が確実には分っていないKre9が関与して作られている。遺伝子破壊株が致死的であることからKre5とKeg1は単独で必須な機能を担っており、Kre6にはSkn1、Kre9にはKnh1というホモログが存在し二重破壊株で致死になることから、これらは重複して必須な機能を担っている。 昨年度の解析で、機能を維持していると思われたC末端HAタグ標識Kre9は、間接免疫蛍光染色により主にER様の像として認められた。しかしタグ標識していない本来のタンパク質を検出することを重視し、大腸菌で調製したGST-Kre9融合タンパク質と酵母で分泌高発現させたKre9タンパク質を抗原としてウサギを免疫した。後者の血清はO-糖鎖を認識する抗体を多く含み、多数のタンパク質と交差反応するため使えなかったが、前者の血清からアフィニティ精製した抗体は、野生株のKre9を特異的に検出できた。この抗体により、野生株Kre9は細胞表層のペリプラズムに主に局在することが分った。タグ標識体は、ゴルジでタグが切断されるため、表層到達前のもののみ検出されていたと考えられる。Kre9がERで非リン酸化状態のKre6と結合し、Kre6の細胞表層移行を助けることが明らかになった。リン酸化とこの結合・移行の関係を調べるため、リン酸化酵素の遺伝子破壊株ライブラリを調べたが、単独の遺伝子破壊株の中には見出されなかった。また、細胞壁に組み込まれるβ-1,6-グルカンの合成中間体について調べるため、酵母から抽出したオリゴ糖鎖を解析し、マンノースとグルコースを含む分子種を検出し、その構造解析と関与するタンパク質について調べ始めることができた。
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