研究課題/領域番号 |
24248022
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
長田 裕之 独立行政法人理化学研究所, 長田抗生物質研究室, 主任研究員 (80160836)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 生物活性物質 / 微生物代謝産物 / プロテオーム / フラクションライブラリー / データベース / MPPlot / ChemProteoBase / NPPlot |
研究概要 |
1.天然物フラクションライブラリーの整備と拡充 今年度は微生物代謝産物に加えて、植物に拡張してフラクションライブラリーを構築した。風評被害に悩む福島県の農家から、廃棄予定だった大量の非汚染野菜を入手し、フラクションライブラリーを作製した。約1500フラクションを作製し様々な生物活性試験に供した。トマトの茎から作製したフラクションが、がん細胞に対して増殖抑制効果を示すことを明らかにした。 2.NPプロットデータベースの構築とそれを活用した新規生理活性物質の探索 天然物(NP)フラクションライブラリーのHPLC/PDA/MSデータを三次元表示したNPプロット(X軸にHPLC保持時間、Y軸にMSのm/z、Z軸にUV)を構築した。微生物代謝産物に関しては、菌株に共通の代謝産物と、菌株固有の代謝産物が存在することが一目瞭然となったので、予定を早めて、新規化合物の単離に着手した。その結果、放線菌のフラクションライブラリーから、キノマイシン系の新規化合物RK-1355A とB、糸状菌のライブラリーからデカリン含有新規化合物ピロリジラクトンを単離した。 3.新規生理活性物質の探索と2D-DIGEデータベース(ChemProteoBase)の拡充 NPプロットの照合により、菌株固有の化合物としてピロリジラクトンを見出したので、その作用機作(標的分子)を解析した。薬剤が誘導する細胞形態の変化およびタンパク質発現変動を、これまでに構築したモルフォベース(MorphoBase)およびケモプロテオベース(ChemProteoBase)に照合して、プロテアソーム阻害剤に近いことが示唆された。精製プロテアソームを用いて、実際に試験管内でプロテアソーム阻害活性を確認した。既知のプロテオソーム阻害剤proteasome inhibitor IIのデータとともにケモプロテオベースに登録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
天然物フラクションライブラリーの作製は、順調に進行しているが、その中から予想以上に新規化合物が見出されている。特に、ピロリジラクトンは構造的にもユニークであり、生物活性も既知のプロテアソーム阻害剤とは異なるタイプの新しいプロテアソーム阻害剤であることが明らかになった。これらの結果は、天然物プロットデータベース、モルフォベース、ケモプロテオベースの拡充が予想以上に進んでおり、その有用性を示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
天然物フラクションライブラリーの拡充とNPプロットデータベースの構築 今年度は主に植物のNatural Product(NP)フラクションライブラリーを構築する。フラクションライブラリーを用いることで微量成分の検出が可能になったが、これにより生じた微量成分の単離構造決定という問題点を解消する方法を検討する。植物からの抽出・分離方法を規格化し、再現性の良いフラクション作製条件を確立する。この方法をPDA-LC/MSにより検証する。また、山菜や野菜、特にカルビー(株)より大量のじゃがいもが入手可能になったのでこれを利用しフラクションライブラリーを作製する。葉、茎、根などの各部位よりフラクションを作製する。ライブラリーのPDA-LC/MS分析結果(UVおよびマススペクトル)をもとに植物代謝産物のNPプロットを構築し、理研天然化合物バンク(RIKEN NPDepo: http://npd.riken.go.jp/npd/ja/top)管理のデータベース(NPEdia)と同様の管理方法を検討する。 フラクションライブラリーを利用した新規生理活性物質の探索 構築した微生物代謝産物フラクションライブラリーより、NPプロットを利用し新規化合物や類縁体、菌株特有の代謝産物群の探索を行う。活性を示したフラクションは、スペクトルデータベースより構造の推定・確認を行う。 薬剤標的同定のための2D-DIGE解析およびデータベース構築 活性物質の作用機作(標的分子)を検討するとともに、化合物処理により起こったプロテオーム変動をデータベース(ChemProteoBase)の拡充に利用する。解析に用いられるスポットの同定を進め、本解析系のキャラクタライズを進める。注目されるパスウェイと2D-DIGEの解析により得られる発現の増減を関連付けるマイニングシステムを作成し、推測精度向上をはかり、化合物の作用解析に利用する。
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