研究課題
基盤研究(A)
アミド付加体生成機構の検討として、プロパノイル型付加体(PRL)に特異的なモノクローナル抗体の作製、そして既存のヘキサノイル型付加体(HEL)とも併せて、脳組織の免疫染色の実施、脳髄液中および血液中での存在・定量のためのELISA法の確立を行うことができた。特に、PRLは、グルタミン受容体に結合し、細胞内カルシウム濃度を増加することにより、神経細胞死を引き起こすことが示唆された。また、リポソームにおけるについて化学的な解析を行った。方法は、リポソームを銅イオンと共存させた脂質過酸化反応系で生成した酸化リポソームをフォスフォリパーゼD(from Streptomyces chromofuscus)処理し、n6脂肪酸酸化のマーカーであるヘキサノイル化フォスファチジルエタノールアミン(NHPE)からN-ヘキサノイルエタノールアミン(HEEA)を切り出し、四重極型の質量分析器により検出定量を行った。また、現在、n3脂肪酸酸化のマーカーであるプロパノイル化フォスファチジルエタノールアミン(NPPE)についても化学合成及び微量検出法の開発を行っている。さらに、このリポソームに抗酸化物質として代表的なビタミンE、クロロゲン酸、BHTをそれぞれ添加し、抗酸化評価法として活用出来ることを確認した。さらに、細胞内への取り込みを可視化するため、リポソームの調製時に蛍光脂質を封入して得られたリポソームをマウス由来の培養細胞RAW264.7に導入し、細胞内へのリポソームの取り込みを蛍光顕微鏡により確認することができた。また、ヒトレビー小体病(LBD)の黒質ドパミンニューロンでは顆粒状の酸化DHA修飾タンパク質の蓄積を見出し、α―シヌクレイン過剰発現培養細胞ではミトコンドリア機能障害が惹起されることを明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
プロパノイル型付加体(PRL)の化学合成、抗PRLモノクローナル抗体の作製、そして既存の抗ヘキサノイル抗体とも併せて、脳組織の免疫染色の実施、脳髄液中での存在・定量のためのELISA法の確立は終了することができた。また、フォスファチジルエタノールアミンを対象としたプロパノイル型付加体を化学合成に関しても、リポゾーム法を利用した人工脂質膜の調整法を確立、特異抗体の作製の準備も行うことができた。また、これらの過酸化脂質修飾(アミド型付加体)を受けたAβタンパク質がin vivo, in vitroで神経細胞に対し毒性を呈することも明らかにし、ヒトレビー小体病(LBD)モデル細胞系で、の酸化DHAの蓄積やミトコンドリア機能障害の惹起など興味ある結果を得ることができた。また、抗酸化食品因子として、アスタキサンチン、ゴマリグナンの活性体の大量調製のための準備も順調に進んでいる。
本研究では、アルツハイマー症(AD)、レビー小体症(LBD)の原因となる神経細胞毒性の発現が、それぞれ異なった機序で、脂質過酸化由来のアミド型付加タンパク質が生成し、認知症のバイオマーカーとして期待される。さらに神経変性における細胞死は構造異常をきたした変性タンパク質の蓄積が主要な役割を果たしていると考えられている。本年我々は、AD、PDにおいてアミド型付加タンパク質の増加を示唆する結果をヒトサンプルで得た。今後、細胞モデルを中心とした基礎研究を発展させ、アミド型付加αシヌクレインとAβタンパク質の化学構造の解明と神経毒性の発現の機序を解明する。さらに、LBDおよびADの基盤をなす脳内酸化ストレス、特に脂質過酸化を制御し、神経栄養因子を増加させる食品由来成分をアスタキサンチンとその生体内代謝物を中心に検討する。本研究課題の初年度の平成24年度で得られた内容を基盤に、予定通り大きな研究計画の変更もなく、平成25年度の研究を推進する予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (23件) (うち招待講演 11件) 図書 (7件)
Journal Neural Transmission
巻: 120(1) ページ: 83-89
1007/s00702-012-0876-x
Functional Food
巻: 5(4) ページ: 324-331
J. Food & Drug Anal.
巻: 20 ページ: 350-354
Clinical and Experimental Dermatology
巻: 37 ページ: 252-258
10.1111/j.1365-2230.2011.04215.x.
Curr Top Med Chem.
巻: 12(20) ページ: 2177-2188
10.2174/1568026611212200006
巻: 119 ページ: 405-414
10.1007/s00702-011-0730-6