研究課題/領域番号 |
24248024
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
大澤 俊彦 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (00115536)
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研究分担者 |
丸山 和佳子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 加齢健康脳科学研究部, 部長 (20333396)
加藤 陽二 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (30305693)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳内老化 / アルキルアミド型付加体 / 抗酸化食品因子 / 酸化ストレスバイオマーカー / アルツハイマー症 |
研究概要 |
Alpha-synucleinを過剰発現させたレビー小体病モデル細胞を ドコサヘキサエン酸(DHA)で刺激することで、プロパノイルリジン(PRL)およびスクシニルリジン(SUL)により修飾を受けたタンパク質が蓄積されることを見いだした。PRL、SUL修飾タンパク質の一部は凝集したalpha-synucleinであり、DHAの濃度依存的に細胞死が惹起された。ヘキサノイルエタノールアミン(HEEA)およびプロパノイルエタノールア(PREA)の微量検出定量法の構築を目的に、安定同位体を含む内部標準標品も合成、生体膜モデルとしてリポソームを用いたHEEA, PREAの検出を検討し、エイコサペンタエン酸(EPA)あるいはDHAを含むフォスファチジルコリンを組み込んだリポソームからはPREAが検出され、リノール酸を構成脂肪酸とするカルジオリピンを組み込んだリポソームからはHEEAの検出に成功した。さらに、直接、修飾リン脂質を対象に、HEEAおよびPREAのHILIC-MSによる検出法も構築した。しかし、HEPE, PRPEをエピトープとする抗体作成では、特異性の高い細胞株を得ることはできなかった。さらに、マクロファージ系細胞RAW264.7に取り込ませたヘキサノイルリジン(HEL)およびPRLの細胞内代謝についての検討も行い、経時的な取り込みが確認され、取り込み後、培養時間とともに細胞外に遊離のHELあるいはPRLが増加していることが明らかとなった。さらに、アスタキサンチンやゴマリグナン代謝物の脳内神経細胞変性の対する抑制作用の検討のために、神経細胞(SHSY-5Y細胞)を組み込んだ免疫賦活・抗酸化・抗炎症作用の評価システムの構築にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜の構成成分である多価不飽和脂肪酸 (polyunsaturated fatty acid, PUFA) は脳に多量に含まれる。レビー小体病などの神経変性疾患では、変性に陥った神経細胞で酸化ストレスが増大している。DHA による細胞死の機序にはその酸化物であるPRL、SUL修飾タンパク質の生成が関与していることが細胞実験およびヒト剖検脳の解析の結果示唆された。 さらに、新たなバイオマーカーとして期待しているHEEA, PREAについては安定同位体を用いた微量検出定量法を構築でき、酸化リポソームからのそれぞれの検出に成功し、また、HEEA, PREAを含むPE体(HEPE, PRPE)をHILIC-MSにより検出することが出来たが、HEPE, PRPEに対するモノクローナル抗体作成については、成功しなかった。さらに、脳内に蓄積する修飾タンパク質の代謝を検討するため、モデルとして過酸化脂質修飾タンパク質をリポソームにより細胞に導入する系を構築した。細胞内で修飾タンパク質がアミノ酸レベルにまで分解され、修飾アミノ酸が細胞外に放出されていることを確認した。また、神経細胞(SHSY5Y細胞)を組み込んだ免疫賦活・抗酸化・抗炎症作用の評価システムの構築に成功し、アスタキサンチンやゴマリグナン代謝物の保護作用の検討のための準備は整った。
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今後の研究の推進方策 |
PRL、SUL化タンパク質の中でもレビー小体病で蓄積する病因タンパク質であるalpha-synuclein、アルツハイマー病の病因であるamyloid beta proteinが修飾されることにより、それらの毒性が増加、あるいはタンパク質の機能低下により細胞死が惹起される可能性について検討する。PRL、SUL修飾タンパク質がレビー小体病、アルツハイマー病の剖検脳において蓄積しているか否か検討する。 また、培養細胞、動物組織、血液や尿などを用いて、HEEA, PREAなどを検出し、酸化ストレスのマーカーとして活用できるか検討し、HEPE, PRPEの直接的な検出について、さまざまな分子種を想定してmultiple-reaction monitoring(MRM)を設定し、リポソームや実際の細胞、組織における存在を検討する。また、HEPE, PRPEなどの修飾リン脂質がアミロイドタンパク質重合などを促進する可能性について検討を進める。さらに、HEPE, PRPEに対するモノクローナル抗体作成については実験方法を見直し、特に菌体-リン脂質免疫源を長期免疫することで、特異性の高い抗体の取得を目指す。細胞内でどのように分解代謝されるのか、プロテアソーム系の関与などを検討していく。加えて、細胞・組織内で特異的に結合するタンパク質を探索する。これにより細胞内での過酸化脂質修飾タンパク質の分解機序や神経編成疾患の誘導機構について明らかにしていく。さらに、アスタキサンチンやゴマリグナン代謝物の大量調製は順調に進展しているので、今後、浜松ホトニクス研究所との共同研究により開発したヒト脳内神経細胞(SHSY-5Y細胞)好中球の自然免疫反応を利用した細胞内カルシウムイオン濃度(蛍光)とスーパーオキシド産生(化学発光)を同時に検出するシステムを用いて、脳内神経細胞変性に対する保護効果の評価を行う。
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