研究課題/領域番号 |
24248026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 真 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (10232555)
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研究分担者 |
原田 一宏 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00372087)
横田 康裕 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (40353908)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 森林政策 / 参加型森林管理 / 気候変動 / 地域発展 / REDD+ / セーフガード / フェアトレード / 森林認証制度 |
研究実績の概要 |
<小課題1>アジア諸国の参加型森林管理に関してフィールド調査と文献調査を実施した。 <小課題2>地域社会は動的な存在であるため事業開始後に住民参加を確保する順応的な手段として苦情処理メカニズムに注目した。カンボジアにおけるREDD+パイロットプロジェクトの事例分析より、苦情処理メカニズムの実効性強化には、担当者に対する不服申立の手段の強化、外部アクターも関わる苦情処理の機能強化、ハイレベルの行政部局による調停機能の強化、プロジェクトがもたらす便益の公平な分配に関する苦情処理機能の強化が重要であることがわかった。 <小課題3>リアウ州南ブキットバリサン国立公園にて26世帯を対象に世帯調査を実施した。WWFや政府のプログラムによって公園内のコーヒー農園を放棄し公園外で農業を営む農民たちであるが、政府との関係は良好であった。森林認証制度に関しては、ジャワの1村を対象に森林認証制度の普及状況に関する情報を収集した。 <小課題4>持続可能な生計アプローチを援用して参加型森林管理による土地利用の変化がどのように住民の生計と二酸化炭素ストックへの影響を与えるのかを評価した。また、REDD+活動の実施における参加型森林管理の可能性について、その成果を3E基準(有効性、効率性、公平性)とコベネフィットの観点から検討した。その結果、REDD+の実施のために参加型森林管理を活用することの妥当性を示すことが出来た。また、REDD+実施のための国家プログラムの実行可能性に影響を与える諸要因を、4つ(「政策のターゲットである森林の特性」、「政策による影響を受ける人々の特徴」、「政策手段の特質」、「関与している利害関係者のタイプ」)に類型化した。REDD+のための国家政策を成功させるためには、上記の4要因を重視した制度設計を行う必要があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小課題1から4までについては、予定していた当初計画で想定していたよりも明確な焦点を定めて研究を進めることができた。小課題5と6の進捗状況は予定よりも遅れている。以上より、全体としておおむね予定通り順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
<小課題1-3>これまでの研究を継続して進める。 <小課題4>研究開始時は、生計確保、参加確保、権利確保のためにどのような制度オプションが必要なのか検討する予定であったが、それらはプロジェクト内容、地域の森林資源・利用状況、地域の社会・経済・政治状況に対応したものである必要があり、一般的な解を提示するのは困難である。そこで、「システム」的な要件として順応的管理(特に苦情処理メカニズム)の重要性に着目する。これについては、先行して検討が進んでいる鉱山開発の分野での情報を参考にしながら、気候変動緩和目的の森林管理プロジェクトにおける苦情処理メカニズムを検討する。 <小課題5>コミュニティの森林認証にせよ、フェアトレードにせよ、あるいはREDD+にせよ、地域住民の権利が明言されている点が従来の参加型森林管理と異なる。また、従来の参加型森林管理は森林産物や農産物はローカル・マーケットでの取引を中心としていたが、森林認証を受けた木材、フェアトレード産物、REDD+のクレジットは国際市場との関わりが強い点が特徴である。この違いに着目して制度オプションについて検討したい。 <小課題6>以上を総括し参加型森林管理の制度オプションを検討する。
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