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2013 年度 実績報告書

種内・属内レベルの集団ゲノミクスによる樹木の適応進化・種分化プロセスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24248028
研究機関京都大学

研究代表者

井鷺 裕司  京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50325130)

研究分担者 津村 義彦  独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (20353774)
上野 真義  独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (40414479)
瀬戸口 浩彰  京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (70206647)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード進化 / 適応 / 次世代シーケンサー / 系統解析 / RNA-seq / RAD-seq
研究概要

Callitris columeraris複合種はオーストラリア大陸全域に分布を拡大した系統群であり、砂漠・温帯・熱帯サバンナという多様な気候下で生育している。生育地全域から収集した種子で共通圃場実験を行い、8種類の形質データを得た。形質値と自生地の気候要因との相関を系統関係を考慮して解析したところ、葉長・気孔密度・葉の窒素濃度・樹形などの形質が季節降水量と有意な相関があった。また、各形質について祖先復元を行った結果、半乾燥地環境に分布していた共通祖先が乾燥地や熱帯モンスーン帯なへ進出する中で、利用可能な水資源量が選択圧となって多様な形態・生理形質が進化した事が示された。
また、C. columeraris複合種を含む5種(7個体)からトランスクリプトームを次世代シーケンサーにより収集した。個体あたり5千万リードの塩基配列、13万個コンティグ配列を得た。そのうち、32,737個はタンパク質データベースの中に類似配列があり、機能やアミノ酸配列を推定できた。非同義置換(dN)同義置換(dS)の比より種分化と環境適応に関連する遺伝子の探索を行った結果、種間でdN/dS>1となる72個の配列を抽出することができた。
大陸全域から採取した植物試料からDNAを抽出し、制限酵素で切断されたDNA断片を次世代シークエンサーで網羅的に解読することで、非モデル生物において多数のゲノム領域の塩基配列を得られるRAD-seq解析を行った。その結果、約120個体の豪州ヒノキ個体について4000を超える数の一塩基多型(SNPs)を検出できた。これらのSNPsの中には自生地の気候要因と有意な相関をもつものが約100個含まれていた他、多くのSNPs同士の間には比較的強い連鎖不平衡係数が推定されたことから、オーストラリアの多様な気候環境がゲノムの複数領域に選択圧として働いた可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Callitris columeralis複合種の広い生育地全域から収集した種子を用いて共通圃場実験を実施することによって、自然選択圧として働いた環境要因の特定とそれに応答して起きた形質進化を示すことができた。また、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析や、RAD-seqによる一塩基多型解析により,各種気候要因と相関をもつSNPsを見いだすこともできた。これらのことから、当初の研究実施計画どおり順調に研究が進展していると考える。

今後の研究の推進方策

本年度、RAD-seqによる一塩基多型解析やRNA-seqによるトランスクリプトーム解析で得られた,適応に何らかの形で関連している可能性のあるSNPsのゲノム上の位置を明らかにする。裸子植物は胚乳が母親に由来する大配偶子体の遺伝子のみを持つという特性を活用して、連鎖地図の作成を進め、SNPsのマッピングを行う.同時に,Callitris columeralis複合種のトランスクリプトームライブラリからは非同義置換率が特に高い遺伝子が明らかになったので、それらについて次世代シークエンサーを用いてリシークエンス実験を行い、得られた塩基配列データについて中立進化の検定を行う予定である.また、他の針葉樹で報告されている乾燥ストレス耐性等、環境適応に関連する遺伝子を、本研究で解読した塩基配列の中から探索する。これらの配列に加え、アミノ酸の置換速度の解析から抽出した、種分化と環境適応に関連する候補遺伝子とを対象に、塩基配列の収集を行い集団の遺伝的変異の解析を詳細に行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Genetic evidence for paternal inheritance of the chloroplast in four Australian Callitris species (Cupressaceae)2014

    • 著者名/発表者名
      Sakaguchi S, Tsumura Y, Crisp MD, Bowman DMJS, Isagi Y
    • 雑誌名

      Journal of Forest Research

      巻: 19 ページ: 244-248

    • DOI

      10.1007/s10310-012-0384-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Climate, not Aboriginal landscape burning, controlled the historical demography and distribution of fire-sensitive conifer populations across Australia2013

    • 著者名/発表者名
      Sakaguchi S, Bowman DMJS, Prior LD, Crisp MD, Linde CC, Tsumura Y, Isagi Y
    • 雑誌名

      Proceedings of the Royal Society B

      巻: 280 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1098/rspb.2013.2182

    • 査読あり
  • [学会発表] バイオームを超えたヒノキ科針葉樹の環境適応-系統解析と共通圃場実験から見えてきた種分化の歴史

    • 著者名/発表者名
      阪口翔太, David Bowman, Lynda Prior, Michael Crisp, 津村義彦, 上野真義, 伊藤元己, 井鷺裕司
    • 学会等名
      日本進化学会第15回つくば大会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 招待講演
  • [学会発表] カリトリスのトランスクリプトーム解析

    • 著者名/発表者名
      上野真義, 阪口翔太, Mike Crisp, Lynda Prior, David Bowman, 津村義彦, 井鷺裕司
    • 学会等名
      森林遺伝育種学会第2回大会
    • 発表場所
      東京大学(東京都文京区)
  • [学会発表] 豪州ヒノキにおける適応形質の遺伝的変異

    • 著者名/発表者名
      阪口翔太, 津村義彦, 上野真義, 伊藤元己, 永野惇, David Bowman, Lynda Prior, Michael Crisp, 井鷺裕司
    • 学会等名
      第61回日本生態学会大会
    • 発表場所
      広島国際会議場(広島県広島市)
  • [学会発表] 生態ゲノミクスによる豪州ヒノキ種群の環境適応の検証

    • 著者名/発表者名
      阪口翔太, 上野真義, 津村義彦, 永野惇, 伊藤元己, David Bowman, Lynda Prior, Michael Crisp, 井鷺裕司
    • 学会等名
      第125回日本森林学会
    • 発表場所
      大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市)
    • 招待講演
  • [図書] 教養としての森林学2014

    • 著者名/発表者名
      井鷺裕司ほか
    • 総ページ数
      253
    • 出版者
      文永堂出版
  • [図書] 生態学者が書いたDNAの本2013

    • 著者名/発表者名
      井鷺裕司、陶山佳久
    • 総ページ数
      200
    • 出版者
      文一総合出版
  • [備考] オーストラリア大陸における豪州ヒノキの適応進化

    • URL

      https://sites.google.com/site/shota0060/home/research

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公開日: 2015-05-28  

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