研究課題/領域番号 |
24248030
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
近藤 隆一郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任教授 (80091370)
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研究分担者 |
平井 浩文 静岡大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70322138)
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90526526)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 針葉樹材 / 広葉樹材 / IFFP / バイオエタノール / キチリメンタケ / 担子菌 / 糖化発酵 / 脱リグニン |
研究実績の概要 |
1.針葉樹対応型IFFP の確立 鍵酵素であるピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)遺伝子をクローニングし、キチリメンタケにて強制発現する株の作出を行った。野生株(1.5 g/L)と比較してアルコール発酵能の高いP3株(2.5 g/L)の取得に成功したが、本株は野生株が有する「スギ材腐朽能」を欠落していた。そこで、ラッカーゼを産生するキチリメンタケL61株を用いて、スギ材のIFFPを試みた。28日間の脱リグニン処理後、発酵液体培地を添加し発酵させた結果、発酵12日目において野生株より有意なエタノール産生が認められたことから、リグニン分解能の付与によりアルコール発酵能が改善されることが判明した。 2. 広葉樹対応型IFFP の確立 白色腐朽菌を用いたIFFPを考えた場合、リグニン分解酵素とともに糖加水分解酵素の産生能も上げる必要がある。そこで本年度はエンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、β-グルコシダーゼ遺伝子のクローニングを行った。その結果、約1.8 kbp、1.6 kbp、及び3.9 kbpのエンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼ遺伝子の取得に成功した。 3. IFFPプロセス各要素技術の強化 広葉樹対応型IFFPプロセスの各要素反応について検討した。脱リグニンについては化学処理とのコンビネーションについて検討すると共に、脱リグニン培養時に微量元素を添加することで脱リグニン能が向上することを示した。糖化発酵プロセスについては、未晒クラフトパルプを基質として基質濃度と生成エタノール量について検討し、基質濃度9%(w/v)から2.6%(w/v)のエタノールを生じることが明らかとなった。一方で、16%(w/v)の基質からはごく少量のエタノールしか得られなかったことから、本菌によるセルロース糖化の開始には初期含水率が重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、地球環境が悪化する中で、さらなる低炭素社会の実現、食料不足問題およびエネルギー供給問題の 解決は人類の最重要課題となっている。本課題では食料問題と競合しない未利用バイオマスである木質資源を活 用するための「多機能型担子菌による統合木質バイオリファイナリープロセス(Integrated Fungal Fermentati on Process (IFFP))」の構築を目的に、木質分解能(リグニン除去、セルロース分解)を強化し、さらには従来では達成し得ないレベルのアルコール発酵能を付与した多機能性担子菌の分子育種を行うことで、木質バイオ マスよりワンステッ プでエタノールを生産する技術開発を行った。 針葉樹材に対応したIFFP、また広葉樹に対応したIFFPの可能性が示唆される結果が得られた。来年度の検討を視野に入れて、当初計画に対して、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.針葉樹対応型IFFP の確立 PDC遺伝子の強制発現のみでは明確なアルコール発酵能改善に至らなかったため、アルコール発酵能に優れたPhlebia sp. MG-60株のアルコール発酵メカニズムについて詳細に解析する。 2.広葉樹対応型IFFP の確立 先に得られた3種の糖加水分解酵素遺伝子をタンデムに連結した強制発現プラスミドを構築し、これを白色腐朽菌に導入することで、糖加水分解能が改善されるかどうか検討する。 3. IFFPプロセス各要素技術の強化 Phlebia sp. MG-60の形質転換系確立および糖化発酵時特異的発現ベクターの構築を行い、リグニン分解酵素高発現等による要素反応の向上を図る。
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