研究課題/領域番号 |
24248034
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅川 修一 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30231872)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小分子RNA / トラフグ / メダカ / アコヤガイ / クルマエビ / Heterobothrium okamotoi / RNA干渉 / シーケンシング |
研究概要 |
トラフグ小分子RNAの新規シーケンシング:速筋、遅筋2個体、心臓、鰾(皮部)、胆のう(皮部)、脳、卵巣、皮ふ、腸、鰓、胸腺、頭側腎臓、体側腎臓、脾臓の小分子RNA配列データが得られた。Genomics Workbenchによるアノテーションにより、miRNAと非miRNAの配列情報に分類した。 トラフグ小分子RNAの新規シーケンシング:SOLiDで既読の小分子RNAシーケンスのうち25~31塩基長のシーケンスデータを解読し多数のtRNAフラグメントを見いだした。それらの解析の結果、トラフグ、メダカの両魚種の各組織において、Glu CTCなど8種類の特定のアンチコドン配列を持つtRNAのフラグメントがその他のtRNAフラグメントと比較して多く発現していることが明らかになった。また、本研究では未知のsmall RNAとして2つの配列群を検出した。トラフグゲノムに対するマッピングの結果、これらの配列群の共通配列はゲノム上に存在することが確認された。さらにこれらの未知RNAのノーザンブロット解析の結果、いずれもおよそ30塩基の位置にバンドが検出され、その発現が確認できた。 トラフグ寄生虫Heterobothrium okamotoiのトランスクリプトーム解析:夏季のトラフグ成体の鰓から採取されたH.okamotoi、4個体の虫体全体からtotalRNAを抽出し、cDNAライブラリーを作成した。増幅・精製の後、Ion PGMでのシーケンシングを行った。1リードあたり平均136bp、2306822リード、合計で315.52Mbpのリードデータが得られた。リードデータのアセンブリを行い平均443bpの長さのコンティグ16710個が構築された アコヤガイ、クルマエビの解析:サンプルの選定を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的としているのは以下の4点である。(1)メダカ・トラフグに関して小分子RNAの塩基配列データを分類し、その正体、機能を解明する。(2)(1)同様アコヤガイ、クルマエビの小分子RNA塩基配列のトランスクリプトーム解析を推進する。(3)(1)、(2)で得られた小分子RNAの機能解析を進め産業応用等を図る。(4)魚類に寄生するヘテロボツリウムなどのトランスクリプトーム解析を行ない、それらの遺伝子をターゲッティングするsiRNA等を設計し新たな治療、防御法の開発を目指す。 (1)について、miRNAの分類は完了した。またmiRNA以外に見いだされた知見として特定のtRNAの部分断片が多く見いだされたこと、既知配列とは相同性がみられず、また広く低頻度に発現しているpiRNAと予想される断片とは異なる、高頻度の未同定の配列が新たに見いだされたこと等、は、研究が順調に進んでいる。また今回免疫関連組織の小分子RNAを新たに解読した。さらに先行研究とは異なる次世代シーケンサーで解読した結果、先行研究と大きく異なる頻度結果を示す小分子RNAがいくつか見いだされた。このことから小分子RNA発現の全貌をつかむためには、未知のファクターも含めたさらなる検討が必要であることを示しているが、そのことが判明しただけでも大きな進展であると考える。(2)についてはモデルとして適当な個体選別の検討を進めており、25年度に実施できる状況にある。(3)は(1),(2)の結果がある程度得られてから開始する。(4)について、Heterobothrium okamotoiのトランスクリプトーム解析を推進した。その結果、N.girellaeのvasa関連遺伝子であるNgvlgなど、本研究のターゲットとして有望な遺伝子なども見いだしている。 これらのことから研究は順調に推進していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き以下の項目を行なう。 メダカ、トラフグについて既に得られているデータの解析を進めるとともに、低成長、高成長のトラフグを飼育しているのでそれらから小分子RNAを得てシーケンシングに用いる。 クルマエビ、アコヤガイから各組織を単離し、小分子RNAを単離、精製する。アコヤガイについては特に外套膜、パールサックなどに特に注目して組織を得る。RNAは常法で精製する。Total RNAとして各組織から各0.1mg以上回収する。これらの一部はcDNA合成に用い、残りはノーザンハイブリダイゼーションに用いる。次世代シーケンサに適合したプロトコールにしたがってサンプルを調整する。 既知miRNAに関しては、組織ごとの出現頻度をカウントする。特に飼育条件等で大きな変動が見られるなどのmiRNAを優先して、ISHなど次の実験に用いる。アコヤガイについては、外套膜とパールサックで発現に差が見られるmiRNAを優先して研究を進める。新規miRNAについては、二次構造をEumiRまた従来の小分子RNAのカテゴリーに分類できない分子種があれば、ISHやゲノム上でのコード領域、他生物との相同性比較等を行ない、特に頻度の高いものについて、ノックダウン実験を行う。 モデル二本鎖siRNAを経口導入、あるいは静脈注射で導入し、その動態を調べる。二本鎖siRNAは蛍光ラベル、あるいはRIラベルして、その動態をモニターする。エラに寄生しているヘテロボツリウム中にデリバリーされた二本鎖RNAを定量して、最適な導入試薬、導入条件を導いてDDSを確立する。 ヘテロボツリウムトランスクリプトーム解析の結果、発現頻度の高い遺伝子などをターゲットとしたsiRNAの設計を行なう。DDSを用いて各siRNAの効果を検証し、効果の高いsiRNAを確立する。
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