研究課題/領域番号 |
24248037
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
潮 秀樹 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50251682)
|
研究分担者 |
廣野 育生 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (00270926)
近藤 秀裕 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (20314635)
金子 元 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30466809)
長阪 玲子 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (90444132)
|
研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2015-03-31
|
キーワード | 水産業 / シグナル伝達 / 発現制御 / ストレス / 細胞・組織 / 脳・神経 |
研究概要 |
25年度研究では,魚類を用いた外的中枢神経ストレス因子に対する生物応答モデル系を構築するための,ストレスモデル系の構築を行った.視覚あるいは嗅覚入力による恐怖植え付けのために,ゼブラフィッシュに対して敵対行動を発現する魚種の選定を行った.闘魚として知られるベタをゼブラフィッシュと混飼したところ,当初はベタがゼブラフィッシュを攻撃したが,2日で両魚種が表層と下層に棲み分け,ゼブラフィッシュのストレス誘発性遊泳行動は認められなくなった.次いで,レッドテールブラックシャークとゼブラフィッシュを混飼したところ,少なくとも2週間にわたってゼブラフィッシュは常に逃避行動を示すことが明らかとなった.本組み合わせはゼブラフィッシュの恐怖植え付けストレスモデルとして有効であると判断できる. 次いで,ゼブラフィッシュと同様にモデル生物として扱われるミドリフグへの恐怖植え付けモデルとして数種の魚種と混飼したが,いずれも逃避行動などの特徴的な遊泳行動を示さなかった.そこで,視覚による恐怖植え付けを行うために,いくつかのパターン画像を提示したところ,コントラス差がある斑点模様に対して顕著な逃避行動を示すことが明らかとなった. 平成24年度研究で確立したLC-MS/MSを用いたペプチドの網羅的解析法を用いて,ゼブラフィッシュにおいて絶食によって誘導されるタンパク質分解は一部アポトーシスによるものであり,そのターゲットタンパク質はミオシンなどの筋原線維タンパク質ではなく,パルブアルブミンなどの筋形質タンパク質が主であることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魚類の恐怖植え付けのためのモデル系が確立され,LC-MS/MSを用いたペプチドの網羅的解析法を開発した.これによって,組織内でおこるタンパク質分解を担う酵素群を明らかにできるようになるとともに,分解の対象となりやすいタンパク質を特定することも可能となった.また,ニジマスなどの免疫・炎症系応答解析用のDNAアレイおよび次世代シークエンサーを用い,NF-kappaB などの炎症・免疫応答系転写因子による遺伝子発現制御解析によって,ゼブラフィッシュ,ニジマス中枢ストレスモデルの生物応答を明らかにした.以上のことから,計画通りに順調に進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
既存の遺伝子・タンパク質発現解析技術に加えて,本研究で新たに開発したゼブラフィッシュの遊泳行動のデジタルビデオ解析技術,LC-MS/MSを用いたペプチドの網羅的解析法およびそれによるタンパク質分解プロファイリング解析法,筋肉中の過酸化物の変動を明らかにするハイドロパーオキサイドイメージング法を駆使して,中枢ストレスモデルの生物応答を明らかにしていく予定である.
|