研究課題/領域番号 |
24248038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 房雄 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30221774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農業復興 / 農地管理手法 / 農業経営の多角化 / 合意形成 / 地図情報システム(GIS) / 復興基金 / STB法 / 農作業マニュアル |
研究概要 |
今年度は、昨年度に引き続き、研究対象地区(仙台市若林区荒浜地区、岩沼市林地区)の地域農業復興モデル構築に向けた各種データベースの作成を行った。 また、関係機関並びに関係団体とともに、被災地の今後の農地管理手法、特に農地管理主体のあり方と担い手への農地集積の推進手順について検討を行った。その結果、今後の農地管理手法としては、単に農地の所有と利用を分離して担い手に面的集積を図ることのみならず、農産物の販売を軸に据えた地域農業の収益を最大にする土地利用計画が必要となること、そのための農地管理主体としては従来の農業公社のような組織ではなく、生産から加工、流通、販売をも担える食産業振興公社のような組織が望ましいと考えられた。 さらに、津波被災地の農業復興過程において今後農業経営の多角化が不可欠となることから、荒浜地区では、農産物の高付加価値化の実現に向けたトライアルとして、地元農業者と連携し、平成25年度産の大豆を原料とする商品開発とその販売に取り組んだ。同様に、林地区では、農業経営の多角化(直売所、農家レストラン)に取り組む上でのリスクを最小化にするために、地元住民を対象とするアンケート調査を実施して、潜在的需要の把握に取り組んだ。その結果、荒浜地区でも林地区でも、地元で生産された農産物を原料とする加工品に対する需要が一定程度見込めること、また地元住民が購入を希望する新規作物の生産や貸し農園の開設も充分可能であること、等々が明らかになった。 このほかに、新規従業員向けの農業生産技術の習得を迅速かつ円滑にしていくために、「農匠ナビ」(農林水産省補助業)に準拠したデータベースの構築と作業マニュアルの作成が必要となることが明らかになった。そこで地域農業復興モデル構築の一環として、荒浜地区や林地区の農業生産法人等において農作業のデータベースづくりに着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体からみれば概ね順調に進捗しているが、地権者の所在確認に想定した以上に時間を要していること、それに伴い将来意向の把握が若干遅れている。また今年度は中越地震の経験を現地で視察研修する計画であったが、当方と相手先の都合で日程を確保することができず、同視察研修を次年度に延期せざるを得なかった。この点もやや遅れている原因の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であることから、各種データベースの整備を早期に完了させて、作物学や土壌学の連携研究者らと共に各地区の土地利用計画案を完成させる。それと平行して今年度得られた成果を取り入れた各地区の地域農業ビジネスモデルを被災者及び関係機関、関係団体に提示して、その妥当性や実現可能性等を検討する。さらに、同ビジネスモデルのマネジメント体制のあり方について多面的角度から調査検討を行い、その実現可能性を検討する。そして最後に、3年間の研究成果を取りまとめ、報告書を作成、出版する。
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