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2013 年度 実績報告書

骨格筋における異種細胞間コミュニケーション機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24248045
研究機関北海道大学

研究代表者

西邑 隆徳  北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10237729)

研究分担者 保坂 善真  鳥取大学, 農学部, 教授 (00337023)
辰巳 隆一  九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40250493)
尾嶋 孝一  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 畜産物研究領域, 研究員 (60415544)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード骨格筋 / 細胞間コミュニケーション / 筋細胞 / 脂肪細胞 / 神経細胞 / 細胞外マトリックス
研究実績の概要

脂肪前駆細胞であるマウス3T3-L1細胞の増殖・分化・成長の各過程において分泌されるタンパク質/ペプチドの網羅的かつ定量的な解析を行い、発現プロファイルを作成した。同定した215個のタンパク質/ペプチドのうち、分泌性因子は86個であった。分泌性因子の内訳は成長因子、細胞外マトリックス、タンパク質分解酵素阻害剤、およびエクソソーム構成タンパク質などであった。コラーゲンを主体とする細胞外マトリックス成分の分泌が分化と共に増加する傾向が示され、脂肪細胞が積極的に細胞外マトリックスを形成することが示唆された。
筋細胞と脂肪細胞の細胞間コミュニケーション機構:筋芽細胞を分化させた筋管と脂肪前駆細胞を分化誘導した脂肪細胞を共培養すると、脂肪細胞の脂肪滴のサイズが単独培養の脂肪細胞のそれに比べて小さくなることが示された。また、筋管の培養上清を用いて培養した脂肪細胞においても同様の傾向が認められた。
筋細胞の細胞外コミュニュケーション因子の一つと考えられるデコリンをノックダウンした筋芽細胞の性状を検索した。デコリンをノックダウンすると細胞の増殖や筋管の形成が促進し、その作用部位が糖鎖(コンドロイチン硫酸B)であることを明らかにした。デコリンの増殖および筋分化をコンドロイチン硫酸Bが制御している可能性が示唆された。
分化初期の衛星細胞(筋芽細胞)が分泌する神経軸索ガイダンス因子Sema3Aによる運動神経末端の再接着制御機構を追究した。筋芽細胞の分化培養液にSema3A-siRNAを添加しSema3A発現をノックダウンすると、アセチルコリン受容体(nAChR)サブユニットγ, εの発現が有意に抑制されることを、RT-qPCRおよびwestern blotting解析により明らかにした。他のサブユニットα, β, δおよび MuSK, rapsyn の発現には変化は認められなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度実施した筋細胞での各ステージにおける分泌タンパク質の網羅的・定量的解析に引き続き、今年度は脂肪細胞が分泌する生理活性因子の網羅的解析を行い、その解析を終了し、昨年度までの遅れを取り戻した。また、筋細胞と脂肪細胞とのコミュニケーション機構については、新たに筋管と脂肪滴を蓄え始めた脂肪細胞との共培養系で実験を進め、筋管の共存によって脂肪細胞の脂肪滴の成長が抑制されることを新たに示した。さらに、分化初期の衛星細胞(筋芽細胞)が産生・分泌する神経軸索ガイダンス因子Sema3Aをノックダウンすると、アセチルコリン受容体サブユニットγ, εの発現が有意に抑制されることを示した。このように、ほぼ当初の計画通り研究は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

筋脂肪および脂肪細胞が各ステージで分泌するタンパク質/ペプチドの網羅的解析はほぼ終了したので、これらの中から筋細胞および脂肪細胞にオートクリンに、あるいはパラクリンに作用する可能性のある生理活性因子を絞り込む。筋細胞と脂肪細胞とのコミュニケーション機構については、筋管が分泌する生理活性因子の一つであるミオスタチンに焦点を当て、筋管が分泌するミオスタチン量を定量するとともに、脂肪細胞膜上の受容体の検索ならびに細胞外マトリックスの関与を検証していく。さらに、筋衛星細胞と神経細胞の細胞間コミュニケーション機構については、本年度の研究でアセチルコリン受容体の関与が示唆されたので、アセチルコリン受容体の挙動にも焦点を当てて検討を進める予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Preliminary Time-Course Study of Antiinflammatory Macrophage Infiltration in Crush-Injured Skeletal Muscle2013

    • 著者名/発表者名
      Jun-ichi Shono, Shohei Sakaguchi, Takahiro Suzuki, Mai-Khoi Q. Do, Wataru Mizunoya, Mako Nakamura, Yusuke Sato, Mitsuhiro Furuse, Koji Yamada, Yoshihide Ikeuchi, Ryuichi Tatsumi
    • 雑誌名

      Animal Science Journal

      巻: 84 ページ: 744-750

    • DOI

      10.1111/asj.12105

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Muscle cells suppress the differentiation of adipocytes vie myostatin in co-culture system2013

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto, S., Wakamatsu, J., & Nishimura, T.
    • 学会等名
      The 2013 Annual Meeting The American Society for Cell Biology (ASCB)
    • 発表場所
      New Orleans, USA
    • 年月日
      2013-12-14 – 2013-12-18
  • [学会発表] Semaphorin 3A secreted from myogenic stem cells promotes slow-twitch muscle fiber generation2013

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Suzuki, Koichi Ojima, Mai-Khoi Q. Do, Minako Hara, Wataru Mizunoya, Mako Nakamura, Yoshihide Ikeuchi, Judy E. Andeson, Ryuichi Tatsumi
    • 学会等名
      2013 EMBO Workshop on “Semaphorin Function and Mechanism in Action”
    • 発表場所
      Cemay-la-Ville, France
    • 年月日
      2013-10-30
  • [学会発表] 筋肥大・再生における筋幹細胞・運動神経末端・マクロファージのコミュニケーションダイナミクス2013

    • 著者名/発表者名
      辰巳 隆一
    • 学会等名
      第43回日本栄養・食糧学会 北海道支部会シンポジウム「「組織の機能を支える細胞間クロストーク」
    • 発表場所
      北海道大学(札幌市)
    • 年月日
      2013-10-26
  • [学会発表] Muscle regeneration dynamics mediated by resident myogenic stem cells: a possible implication in moto-neuritogenesis and fiber-type regulation2013

    • 著者名/発表者名
      Ryuichi Tatsumi, Judy E. Andeson, Ronald E. Allen
    • 学会等名
      Tucson Symposium 2013 on "The Biology of Muscle Growth and Repair"
    • 発表場所
      Tucson, USA
    • 年月日
      2013-09-27
  • [学会発表] 筋幹細胞由来の分泌因子Sema3Aによる筋線維型自律制御機構の解明2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木貴弘, 尾嶋孝一, 大屋雄暉, 大坪秀明, 水野谷 航, 中村 真子, 池内 義秀, 辰巳 隆一
    • 学会等名
      第117回日本畜産学会大会
    • 発表場所
      新潟大学(新潟市)
    • 年月日
      2013-09-09
  • [学会発表] 筋肉内結合組織を培養基質とした脂肪細胞培養系の確立2013

    • 著者名/発表者名
      雷 暁瑩,鈴木健司,若松純一,西邑隆徳
    • 学会等名
      第117回日本畜産学会大会
    • 発表場所
      新潟大学(新潟市)
    • 年月日
      2013-09-09

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公開日: 2016-06-01  

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