研究課題
平成26年度は、それまでの研究成果を踏まえ、以下のような解析を行った。1.皮膚のpH変化と表皮セリンプロテアーゼの関連に関する解析実験には、アトピー性皮膚炎の自然発症モデルマウスであるNC/Tndマウスを使用した。NC/Tndマウスでは、アトピー性皮膚炎の発症に伴い皮膚のpHが上昇、その時の皮膚ではカリクレインの発現量が増加することが明らかとなった。そこで、皮膚炎を発症しているNC/Tndマウスの皮膚に弱酸性の溶液を塗布し皮膚のpHを弱酸性に変化させたところ、カリクレインの発現が減少し、Th2型サイトカインの産生が低下した。一方、皮膚炎を発症していないSPF環境で飼育するNC/Tndマウスの皮膚に弱アルカリ性の溶液を塗布して皮膚のpHを中性程度まで上昇させると、カリクレインの活性が上昇してTh2型サイトカインの産生が増加した。前者の処理をしたマウスでは皮膚のアレルギー性炎症が緩和され、後者の処理をしたSPFマウスでは皮膚に炎症や引っ掻き行動が観察されるようになった。このことから、皮膚pHの変化がアトピー性皮膚炎発症の引き金になる可能性が示唆された(学術論文投稿中)。2.皮膚pHと皮膚バリア構成要素との関連皮膚pHを人為的に変化させた時に、セラミド合成酵素の発現や活性が変化することも明らかになってきた。セラミドは皮膚バリアのうちの脂質バリアを構成する。アミノ酸バリアを構成するフィラグリンとその分解産物であるNatural Moisturizing Factorを解析したところ、これらは皮膚炎の発症に伴って増加することが明らかとなった。このことは、NC/Tndマウスではフィラグリンではなく、セラミドによって維持される脂質バリアに異常があること、代償的にフィラグリンは増加していることを示唆している(学術論文投稿中)。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Dermatol. Sci.
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http://www.tuat.ac.jp/~mol_path/