研究課題
本研究では、酸化ストレス応答において中心的な役割を担う転写因子Nrf2について、ストレス応答系以外の代謝制御や病態制御との関わりについて研究を進めている。本年度は、糖尿病モデルとしてiNOS-Tgマウスを用いて、酸化ストレス応答性転写因子Nrf2が膵β細胞の保護や多臓器間の代謝制御ネットワークに深く関与していることを見いだした。また、腎臓におけるNrf2の役割を検討したところ、炎症環境において尿細管および糸球体を保護していることを見いだした。腎炎においてマクロファージの集積が認められたので、炎症促進性のマクロファージにおいけるNrf2の役割を検討した。その結果、IL-1β、IL-1α、IL-6などのサイトカイン遺伝子の発現をNrf2が抑制することを明らかにした。これまでの研究では、Nrf2は転写活性化因子としての機能が知られていたが、本研究によって転写抑制能も有することが示唆された。次に、細胞運命決定におけるNrf2の役割を検討するために、Nrf2およびKeap1(Nrf2抑制因子)の欠損マウスを用いて骨髄造血細胞の解析を行った。その結果、Nrf2は 造血幹細胞を分化の方向に動員させ、造血前駆細胞を増加させる性質を持つことを明らかとした。また、骨髄球系への選択的な分化を誘導することも見いだした。このように、非ストレス環境下でもNrf2は細胞運命決定において必須であることを示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
膵β細胞の保護や糖尿病、肥満等の病態におけるストレス応答性転写因子Nrf2の機能について明らかにし、論文発表することができた。また、非ストレス環境下におけるNrf2の役割として、造血細胞の運命決定に必須であることを明らかにした。Nrf2の条件付き欠損マウスの解析系の確率や転写因子複合体解析も順調に進んでいる。
ストレス応答性転写因子Nrf2の腫瘍免疫系における役割を検証する。解析にはNrf2およびKeap1遺伝子の条件付き欠損マウスを用いる。同様に、様々な病態モデル(腎臓病、動脈硬化、肺炎など)を利用して、病態とNrf2の関係を明らかにする。Nrf2およびKeap1と結合するタンパク質の同定を行っており、同定された因子の機能解析を代謝制御系との関連を中心に進める。これまでにNrf2のDNA結合ドメインに変異を導入したマウスの樹立に成功しており、今後は活性化したNrf2がDnAを認識する分子メカニズムを個体レベルで明らかにする。この研究の成果は、Nrf2を中心とした転写制御ネットワークの理解につながる。
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