研究課題/領域番号 |
24249016
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高井 俊行 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (20187917)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫抑制 / PirB / B細胞 |
研究概要 |
我々は免疫抑制受容体PirBを発見しこれがMHCをリガンドとして免疫疾患の発症を制御することなどを報告してきた。最近PirBが神経軸索伸長の抑制をも担い,神経系リガンドとして新たに三種のタンパク,Nogo,MAG,OMgpが報告された。よってこれらマルチリガンド(ML)は多様な免疫系の情報を,PirBを含めて二三の受容体に集約させるネットワークを構築すると想定され,我々は実際に免疫系にも上記の新リガンドが発現することを突き止めた。本研究はMLの視点から,PirBが担当するものと協調,あるいは独立に機能する複数の新しい免疫制御経路を探索しそれを同定することを目的として研究を行っている。 平成24年度はNogo欠損マウス,MAG欠損マウスの表現型を解析し,PirB欠損,MHCI欠損との整合性を評価する計画を立てた。さらにB,T,樹状細胞の分化と抗体クラススイッチ制御,自己抗体産生,アレルギー,自己免疫疾患を中心にした解析を行い,これらB/T/樹状細胞関連の制御についてMLによる新しい機構の存在を明確にする試みを行った。 その結果,Nogo欠損マウスでは骨髄プレプロB,プレB,および成熟B細胞の有意な増加が見られ,さらに胚中心の形成が野生型マウスと比べて亢進しているデータが得られた。これを支持する観察として胚中心B細胞とプラズマ細胞の増加傾向が見られた。これらの観察結果に基づきPirB欠損マウスのこれら項目におけるデータとの比較を行っており,とりわけB細胞の分化制御にPirBとNogoがそれぞれ独立に,あるいは部分的に共通の経路を介して影響を及ぼしていることが示唆され,そのシグナル伝達経路などに関する更なる解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりNogo欠損マウス,MAG欠損マウスの解析を開始し,そのうちNogo欠損マウスにおいて当初の期待どおりB細胞などに興味深い表現型が得られることが明確になったため。 さらにMAGについては神経系ではPirBのリガンドとなる報告があるものの,免疫系,とりわけB細胞や樹状細胞の解析結果ではMAG欠損マウスについて特段の表現型を認めず,Nogoとの違いが明確になったためである。 OMgp欠損マウスについては入手先の同意が得られず解析については中断しており,これは計画を見直す必要があった。 以上のようにNogoについてPirBの制御経路との共通部分と相違部分が明確になる道筋が見え,今後の研究成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり平成25年度はアレルギーおよび自己免疫疾患におけるPirB, Nogoの役割に関する解析を欠損マウスを用いて進める予定である。とりわけ自己免疫疾患における胚中心の役割とその構成B細胞,T細胞の相互作用の研究は重要であり,このポイントを特に推進したいと考える。
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